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2015 年度 実施状況報告書

鉄鋼材料表面に形成されたバイオフィルムの鉱物化に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 15K06530
研究機関鈴鹿工業高等専門学校

研究代表者

生貝 初  鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 名誉教授 (60184389)

研究分担者 平井 信充  鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (50294020)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード生体鉱物化 / バイオフィルム / 緑膿菌 / 炭素鋼 / 鉄イオン / 細胞外重合物質 / 微生物腐食 / 藍鉄鉱
研究実績の概要

緑膿菌(PAO1)の培養液に炭素鋼(SS400)を浸漬し、この試験片表面に形成されたバイオフィルム(BF)内の(1)PAO1の増殖や分布状態ならびに(2)超微細構造や化学組成について解析した。
(1)PAO1培養液に2日間浸漬した炭素鋼試験片の表面構造を集束イオン/電子ビーム加工観察装置(FIB/SEM)の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて調べたところ、BFの表面や内部(表層に近い部分)にPAO1と思われる桿状の構造物が確認できた。しかしながら、浸漬9日と30日経過した炭素鋼試験片の表面は無機的な結晶状の物質に多数被われてPAO1が観察できなかった。
(2)次に浸漬2日後と30日後の炭素鋼試験片表面に形成されたBFに対し垂直になるように収束Gaイオンビームを照射してBFを削り取り、BF断面の元素分析を行った。浸漬2日と30日の試験片の最表面に炭素、そして直下の堆積物から最下層(基部)の炭素鋼までFeやP、Oが検出され、これらは生体鉱物として生成された藍鉄鉱(Fe3(PO4)2・8H2O)由来の元素と考えられた。さらにBF内部からMgも検出され、培地に含まれるMgとリン酸の化合物が生成されたのではないかと思われた。次にSPring-8で測定したBF内部のX線吸収係数をもとにBFに含まれるFeの濃度求めた。その結果、炭素鋼試験片のFeを100%とすると、PAO1培養液に30日間浸漬した炭素鋼試験片のBF内部には13%のFeが含まれていることが明らかになった。
これらの研究成果を平成27年度に開催された第29回日本バイオフィルム学会や日本防菌防黴学会第42回年次大会、日本鉄鋼協会第170回秋季大会において発表することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

炭素鋼表面に形成されたバイオフィルム(BF)内部の構造についておおむね当初の計画どおり調べることができた。また集束イオン/電子ビーム加工観察装置(FIB/SEM)を用いて試験片表面に形成されたBFの断面構造を調べることができた。これによって生体鉱物化が起きたBF内部の細菌や生成された鉄-リン酸化合物の分布状態を推定することができた。また、SPring-8で得られた結果をもとにしてBF内部に含まれる鉄の濃度を計算することができた。実体顕微鏡によってBFが形成された炭素鋼表面に多くの結晶が観察されることから、元素分析によって検出された鉄は藍鉄鉱を形成していることが示唆された。なお、FIB/SEMによって撮像した断面を再構成してBF内の生体鉱物化を3D可視化する実験を行ったが、平成27年度は3D可視化ができなかった。

今後の研究の推進方策

我々のこれまでの研究から、緑膿菌(PAO1)によって引き起こされた鉄鋼材料(炭素鋼)表面の『バイオフィルム(BF)形成』、『微生物腐食』、『生体鉱物化』は相互に関連性のある連続した現象であることが徐々に明らかになってきた。平成28年度は、集束イオン/電子ビーム加工観察装置(FIB/SEM)や放射光等を用いてBF内部の生体鉱物化を詳細に解析する。
(1)放射光で撮像された炭素鋼表面の構造体は、BF内で生成されたX線を吸収する鉄とリン酸の化合物であることがわかった。本年度は炭素鋼表面を被うBFの本体であるPAO1由来の細胞外重合物質(EPS)の構造を調べる。さらに炭素鋼表面の微生物腐食の状態やBF内の『生体鉱物』の局在性を調べ、『BF-微生物腐食-鉱物化の関係』を明らかにする。
(2)種々の細菌を用いて鉄鋼材料表面にBFを形成させると、『微生物腐食』や『生体鉱物化』が起きるかどうか調べる。

次年度使用額が生じた理由

金属試験片、チップ類、培地等の消耗品の使用額が少なかったことおよび英文校閲や別冊代等を人件費・謝金やその他の予算で使用しなかったことが、次年度使用額が生じた主な理由である。

次年度使用額の使用計画

物品費は、試薬、プラスチック製品、ガラス製品、金属試験片などの購入に使用する予定である。旅費は、研究成果の発表などを行う経費として使用する予定である。人件費・謝金およびその他の予算は、学術論文を投稿する経費として使用する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 鉄鋼材料表面に形成された緑膿菌のバイオフィルムは微生物腐食と生体鉱物化を誘導する2015

    • 著者名/発表者名
      生貝 初、小林正和、平井信充、戸田裕之、諸星知広、池田 宰、上杉健太朗、黒田大介、兼松秀行
    • 雑誌名

      Bacterial Adherence & Biofilm

      巻: 29 ページ: 91-94

    • 査読あり
  • [学会発表] 鉄鋼材料に微生物腐食を引き起こす緑膿菌バイオフィルムの生体鉱物化2015

    • 著者名/発表者名
      生貝 初、平井信充、小林正和、戸田裕之、黒田大介、兼松秀行
    • 学会等名
      日本鉄鋼協会 第170回秋季講演大会
    • 発表場所
      福岡県福岡市九州大学伊都キャンパス
    • 年月日
      2015-09-16 – 2015-09-18
  • [学会発表] 鉄鋼材料表面に形成された緑膿菌バイオフィルムの生体鉱物化2015

    • 著者名/発表者名
      生貝 初、小林正和、平井信充、戸田裕之、諸星知広、池田 宰、上杉健太朗、黒田大介、兼松秀行
    • 学会等名
      日本防菌防黴学会 第42回年次大会
    • 発表場所
      大阪府豊中市千里ライフサイエンスセンター
    • 年月日
      2015-09-01 – 2015-09-02
  • [学会発表] 鉄鋼材料表面に形成された緑膿菌のバイオフィルムは微生物腐食と生体鉱物化を誘導する2015

    • 著者名/発表者名
      生貝 初、小林正和、平井信充、戸田裕之、諸星知広、池田 宰、上杉健太朗、黒田大介、兼松秀行
    • 学会等名
      日本バイオフィルム学会 第29回学術集会
    • 発表場所
      愛知県蒲郡市ホテル竹島
    • 年月日
      2015-07-10 – 2015-07-11
  • [図書] Biofilm and Materials Science(担当部分 Genomics Approach)2015

    • 著者名/発表者名
      Hajime Ikegai, In Hideyuki Kanematsu and Dana M. Barry(eds)
    • 総ページ数
      196ページ(担当 53-60ページ)
    • 出版者
      Springer

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公開日: 2017-01-06  

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