研究課題
最終年度に実施した研究の成果:(1)緑膿菌のバイオフィルム(BF)で観察された生体鉱物化(藍鉄鉱形成)がヒト常在細菌(黄色ブドウ球菌、大腸菌、セラチア菌、腸球菌)で起きるかどうか調べた。試験片表面に存在するPの量を指標にして生体鉱物化を検討したところ、セラチア菌の培養液に浸漬した試験片の表面に緑膿菌とほぼ同程度のPの存在が確認され、藍鉄鉱の形成が示唆された。この結果からセラチア菌は生体鉱物化を引き起こす活性を持っている可能性が高いと考えられた。(2)Mgを含むHI-polypeptone-Yeast Extract培地(HY培地、pH7)で培養したMg要求性の環境細菌Brevundimonas diminutaは、増殖すると培養液をアルカリ性(約pH9)に変え、培養に用いたポリスチレン容器の表面にBFを形成した。そこでアルカリ環境下でBFを形成するB. diminutaがHY培地に浸漬したMg試験片表面にBFを形成するかどうか検討した。Mg試験片を培地に浸漬すると水酸化Mgが生じ培地のpHは瞬時に9になり、この中でB. diminutaは増殖した。しかしかながらMg試験片表面においてBFが形成されたかどうか確認できなかった。研究期間全体の研究成果:SS400の表面に形成された緑膿菌BFの中でSS400から溶出した鉄イオンと培地由来のリン酸イオンが緑膿菌の菌体成分を介して反応し、生体鉱物化が引き起こされることを明らかにした。SS400試験片の鉄を100%とするとBF内に存在する鉄は13%であることがわかった。さらに緑膿菌のBFが引き起こす鉄鋼材料の微生物腐食(MIC)は凹凸の形状をしたBFの凹部分の周縁から始まることがわかった。また生体鉱物化は緑膿菌だけでなくセラチア菌においても起きることが推測された。
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Medical Research Archives
巻: 5 ページ: 1-17
ECS Transactions
巻: 80 ページ: 1167-1175
doi: 10.1149/08010.1167ecst