高圧CO2を希釈溶剤の代替として用いるCO2塗装技術はVOC削減、乾燥エネルギーの低減が可能である。しかしながら、塗料によってはCO2を混合すると貧溶媒作用によりポリマー析出のトラブルを生じ、用途拡大の課題となっている。本研究では、超臨界CO2塗装法における溶剤選定指標作成のために、ポリマー+溶剤+CO2系の相挙動観察および相平衡測定を行い、その結果と各成分の溶解度パラメータ(SP値)との関係性を調査した。 昨年度調査した、PMMAとPBEに加えて、本年度はpolyacrylonitrile (PAN)を樹脂として使用し、34種類の溶剤を用い、まず純ポリマーのSP値をHansen球法により決定した。さらにポリマー+溶剤+CO2系の相挙動を観察し、析出圧力を決定した。以上の検討よりHansenの提案する3次元のSP値を用いることにより、溶剤+CO2混合系のSP値とポリマーのSP値からポリマーの析出条件が判定可能であることがわかった。ここで重要なのは溶剤+CO2混合系のSP値の算出である。通常混合物に関してはSP値は体積分率平均を使用するが、CO2に関しては25℃の飽和液密度とCO2溶解度を用いた場合(Case1)とCO2が溶解した場合の実質的な体積に近い部分モル体積とCO2溶解度を用いた場合(Case2)の2種の方法によりCO2の体積分率を算出した。析出圧力は溶剤種により大きく異なったがCO2混合溶剤とポリマーのSP値の距離は溶剤種によらずほぼ同様な値を示した。SP値の距離の平均値はHansen球の半径に比較的近い値を示した。実際にHansen球により析出圧力を推定したところ、Case1で析出圧力の平均偏差が1.7 MPa,Case2の場合1.4 MPaであり、部分モル体積を使用したCase2の方が若干推算が良好であることが分かった。
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