研究課題/領域番号 |
15K06535
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
相田 卓 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (00466541)
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研究分担者 |
SmithRichard Le 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (60261583)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | イオン液体 / バイオマス / 界面活性剤 / 超臨界抽出 / 微細藻類 / 藻類オイル |
研究実績の概要 |
(I)IL、水、オイルの3成分相平衡データの蓄積およびオイル溶解度に及ぼすIL構造の依存性について検討を行った。本実験では、オイルのモデル物質として直鎖炭化水素(スクワレン(SQ))、ILはバイオマスの反応・溶解の報告が豊富に存在するイミダゾニウム系のIL(1-methyl-3-octylimidazolium chloride: [C8], 1-methyl-3-dodecylimidazolium chloride: [C12], 1-methly-3-hexadecylimidazolium chloride: [C16])を用いた。本実験で用いたILは、アニオン構造は共通しており、カチオン種のアルキル側鎖長のみが異なる化学構造を有する。水―SQ―IL3成分系における相状態は、いずれのイオン液体を用いた系において2相(水相、SQ相)であったが、 [C16]を用いた系でのみSQ相中で乳化が認められた。また、水相におけるSQ溶解度はILのアルキル側鎖長が長いほど高い値を示した。
(II)SQを溶解したIL水溶液から超臨界CO2を用いてSQの抽出・分離を行い、SQ抽出率をモデルにより相関した。超臨界CO2抽出によるSQの抽出率は、ILのアルキル側鎖長いほど低い値を示した。SQの物質収支および界面活性イオン液体の吸着を仮定したモデルは両モデルともにSQの抽出率を良好に相関できた。
以上(I)と(II)の検討により、ILのアルキル鎖長の延長は水溶液中のSQ溶解量を増大させる一方、同水溶液からのSQの超臨界CO2抽出においては抑制に働くことを明らかにした。微細藻類が生産するオイルの水中への分散および超臨界CO2相へのオイル受け渡しを両立可能な界面活性イオン液体はある一定のアルキル側鎖長を有する必要があると考え、検討を行ったILの中では[C12]が有用だと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H27年度は①水溶液におけるIL/オイル・ミセルの形成に対するILの構造依存性の解明、および、②超臨界CO2を用いた界面活性イオン液体水溶液からのスクアレン抽出・分離について検討を行った。①に関してはほぼ検討は完了しているが、実験データの再現性とモデルの信頼度の向上を目的に現在もデータの蓄積を進めている。②はH28年度の計画を前倒しで実行している。以上のことから、現段階における本課題の進捗状況は(1)だと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
<scCO2を用いたIL・オイル・ミセルからオイル抽出におけるIL種、抽出条件依存性の解明> 本研究で検討を行ったILで形成したミセルの超臨界CO2(scCO2)抽出を行い、オイル抽出におけるIL種、scCO2抽出の条件依存性を解明し、本プロセスに適したILの設計指針を獲得する。scCO2を用いたIL/オイル・ミセルからのオイル抽出の報告例は存在しない。そこで、本研究ではまずデータの蓄積を行う。scCO2抽出実験は半回分式または回分式の抽出装置に、IL/オイル・ミセルを仕込み、所定温度・圧力でscCO2を導入することで行う。 scCO2抽出はscCO2の温度・圧力・密度に大きく依存する。本研究では密度変化の大きい(35~45℃)、圧力(10~40 MPa)において、抽出と分離を検討する。抽出後の溶液とscCO2を回収し、オイルを定量し、抽出率を評価する(相田、大学院生1名)。蓄積されたデータをモデルにより相関することで最終的に相平衡推算モデルへ拡張する(スミス、佐藤)。
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次年度使用額が生じた理由 |
相平衡・溶解度の測定が、現存の装置の改良により検討が可能となり、このため、サファイア付き高圧セルの本年度の購入を行わなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度予算に計上した サファイア付き高圧セルは、H28年度以降の課題を遂行するのに必要不可欠な装置であるため、本装置をH28年度に購入する。
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