研究課題/領域番号 |
15K06545
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
吉岡 朋久 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50284162)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 二酸化炭素分離 / セラミック / キレート / チタニア / ジルコニア |
研究実績の概要 |
1.TiO2-ZrO2-キレートゾルの調製および粉体ゲルの特性評価 アルコールを溶媒とし,TiTP,ZrTB,およびDopamine hydrochloride(DOA)を混合し,これを酸触媒下で加水分解・縮重合反応させてTiO2-ZrO2-DOAゾルを調製した.これを乾燥後350℃窒素雰囲気下で焼成することでゲル紛体試料を作製した.その比表面積は約22 m2/g を示し,APTES-TEOS(アミノシリカ)ゲルに比べて,この材料は細孔が少なく緻密であることが示された.しかし,35℃におけるCO2吸着量は,SiO2,TiO2-ZrO2といった従来の材料に比べて特に低CO2圧力下における吸着量は顕著に大きく,キレートの持つアミノ基の効果が発現していると考えられる.同じアミノ基を有するアミノシリカ試料(>30 cc/g)よりCO2吸着量が少なかった(15 cc/g)のは,CO2の吸着に有効な細孔が少なかったためと思われる。
2.TiO2-ZrO2-キレートゾルを用いた製膜,気体透過性評価 α-Al2O3を基材とし,TiO2-ZrO2-DOA複合ゾルをコーティングして350℃, 窒素雰囲気下で焼成することで気体分離膜の作製を試みた.気体透過性に分子篩性が発現し,ガス分離膜の作製が可能であることが示された.CO2,N2,CH4いずれの気体透過率も活性化拡散的傾向を示し,これはCO2の表面拡散的透過挙動が観測されたアミノシリカ膜の傾向とは明らかに異なっていた.200℃においてCO2透過率が4×10-8 mol/(m2 s Pa))と小さく,CO2/N2透過率比は6程度であったことから、膜が緻密になりすぎたと思われる。CO2との親和性を膜透過において発現させるためには,ゾル調製時のコロイド粒径(分子量)を大きくすることや、多孔度を増すように最適な焼成条件を検討する必要があると思われる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度はTiO2-ZrO2-キレートゾルの調製および粉体ゲルの特性評価およびCO2分離専用気体透過装置の作製を主な目標としていたが,CO2親和性を有するゲルの作製に早い段階で成功したため,製膜を前倒しし,CO2分離専用装置ではなく汎用気体透過性試験装置にてまずは膜性能の評価を行うことを優先した.研究項目においてスケジュールが一部前後するところとなったが,最終的な研究目標に向かっては概ね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
・TiO2-ZrO2-キレートゾルを用いた製膜,気体透過性評価 CO2分離材料としての有用性は認められ,また分子ふるい的な気体分離膜の作製が可能であることは明らかとなったため,今後はゾルの調整条件(ゾル粒径)や製膜条件(温度)の最適化を図って,高性能な気体分離膜の作製を試みる.特に二酸化炭素透過選択性およびオレフィンガス透過性に着目し,評価用装置を必要に応じて整備する. ・キレート由来有機物のキャラクタリゼーション TiO2-ZrO2-キレートゲルを化学的に分析し(FT-IRなど)残存有機官能基や化学結合の様子を評価する.キレートの種類や焼成条件(温度・雰囲気)により有機物相にどのような違いが現れるかを検討し,様々な仕様のTiO2-ZrO2-キレート複合膜の気体透過特性との関連を明らかとする.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定よりも早く二酸化炭素親和性を有する膜材料の作製が可能であったため,二酸化炭素専用評価装置の作製よりも製膜と汎用装置による評価を優先したため,若干の次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
更なる膜性能の向上と製膜機構の解明のためい,ゾル調整条件および製膜条件の最適化を図ることを予定している.そのために製膜環境整備(焼成炉など)と必要に応じて汎用気体透過装置を膜細孔評価・二酸化炭素透過試験装置への改良に研究費を使用する予定である.
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