研究実績の概要 |
1.TiO2-ZrO2-キレート剤複合膜による気体透過特性およびナノろ過評価 有機キレート剤としてドーパミンおよびイソプレナリンを用いて調製したゲル粉体試料は,298 KにおいてTiO2-ZrO2試料よりもCO2吸着量が大きい値を示した.これはキレート配位子に含まれるアミノ基がCO2とアルキルアンモニウムカーバイトを形成するなどしてCO2親和性を発現したためであると思われる.これら材料を用いて作製したTiO2-ZrO2-有機キレート配位子複合膜は,TiO2-ZrO2膜と比較して, 分子ふるい性の発現が確認された.しかし,その選択性は高いとは言えず,ガス分離膜としての応用は難しいと判断された.そこで,キレート剤としてイソオイゲノールおよび2,3-ジヒドロキシナフタレンを加えた膜を空気中500℃で焼成することで有機キレート剤をテンプレートとするセラミック膜を作製した.これらの膜は,分画分子量2000程度の分画性能を示し,ナノろ過膜としての応用可能性が示された.
2.分子動力学法による有機物・セラミック複合膜構造の作製と透過シミュレーション BIOVIA社製 MATERIALS STUDIOを用いて有機官能基とTiO2セラミック相を有する構造を再現し,膜細孔表面との相互作用が異なる複数の分子の非平衡分子動力学膜透過シミュレーションを行った.透過分子-膜表面官能基相互作用が大きい場合には透過流量は減少し,細孔径の増加および官能基密度の低下に伴い粘性流れに近づく傾向を示した.ナノ細孔内においては,細孔表面からの相互作用の影響により透過流量が変化することが示された.また,透過分子が十分に拡散できない場合や立体障害の影響を大きく受ける場合,および透過流体が層状構造のような特異な構造となる透過状態では連続流体としての透過モデルを適用できないことが明らかとなった.
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