研究課題/領域番号 |
15K06548
|
研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
野村 幹弘 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (50308194)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 対向拡散CVD法 / シリカ複合膜 / 逆浸透分離 / 酢酸 / 耐酸性 / 熱分解 / Ga添加 |
研究実績の概要 |
粉末官能基安定性試験では、荷電官能基の一つとして、アミン系の官能基をもつシリカ源として、3-Aminopropyltriethoxysilane(APTEOS)、3-Aminopropyltrimethoxysilane(APTMOS)、3-Aminopropyldiethoxymethylsilane(APMDMOS)の3種の加水分解物の熱分解挙動を、熱重量測定装置を用いて調査した。アミノ基の分解温度は、APTEOSが400℃程度、APTMOSが280℃程度であった。土台となるシリカ部分の構造が安定性に大きな影響を与えているといえる。このシリカ源由来のアミノ基は、分解温度が400℃程度と高く、熱安定性は高い。次に、逆浸透装置開発として、自作の逆浸透装置を4系統作製した。来年度以降に効率的に検討が進められる準備ができた。最後に、耐酸性向上のための基材開発として、アルミナ中間層にGa添加の影響を検討した。アルミナベーマイトゾルにGa(NO3)2を30mol%添加し、多孔質α-アルミナキャピラリーにコーティングして基材とした。Ga未添加アルミナ基材は、1.0Mの硫酸水溶液に20 h浸漬後、窒素透過率が10分の1以下に低下した。しかし、Gaを添加アルミナ基材では、窒素透過率の減少は、3分の1程度と小さかった。次に、CVD製膜後のシリカ膜の耐酸性(1.0 M硫酸透過試験)を検討した。Ga未添加アルミナ基材上の膜では、試験開始後より透過流束が上昇し、7.3 時間後には初期と比較して36 %増加した。一方、Ga添加アルミナ基材上のシリカ膜では、41時間の透過試験においてまったく透過流束が変化しなかった。アルミナ層にGaを添加することで、基材の耐酸性を大幅に向上できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(理由)本年度は、耐酸性をもつ基材の開発が検討項目であったが、強酸下での透過試験による評価まで検討した。基材だけでなく、分離層の耐酸性も確認できたことより、来年度以降の開発の礎となる。また、逆浸透装置も4系統作製したことで、実験を並行して行う環境が整った。シリカ源として、Na阻止率の高かったフェニル系のものに加え、アミノ系のものが耐熱性などの条件で高い性能を示す可能性を示した。今後は、これら2系統のシリカ源を中心に検討を行う。以上、基材開発の部分で計画以上の進展をし、他の部分も計画通り進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、初年度に絞り込みを行ったフェニル系、アミノ系の2パターンのシリカ源を用い、逆浸透膜開発に向けた蒸着条件を検討する。重要な製膜パラメーターは、蒸着温度と供給酸化物濃度の2点である。供給酸化物としては、オゾンと酸素の2種を想定している。特にオゾンを酸化物とする場合は、蒸着温度300℃以上でオゾンの熱分解速度が速くなり、有効オゾン濃度が変化するので、蒸着反応機構が変化することが予想される。そのため、変化が大きいと考えられる蒸着温度300℃前後の蒸着温度を中心に検討する。製膜の評価は、単成分無機ガス透過と初年度に自作した逆浸透装置を用いた逆浸透試験とする。まず、低濃度での透過挙動を確認する。阻止性能、透過流束を、ガス透過試験および初年度での粉末官能基安定性試験との相関を見出すことで、合理的に、蒸着条件を絞り込む。
|