本年度は、昨年度の検討結果に基づき、シリカ逆浸透膜の基材としてシリカ中間層を用いて検討を進めた。耐酸性の向上はシリカ中間層にて進め、透過流束の向上は反応時のオゾン濃度制御で進めた。支持体として、厚みの異なる2種のチューブ型の多孔質α-アルミナ(φ3mm、φ10mm)を用いた。この支持体に、ベーマイトゾルを塗布したものをアルミナ基材、シリカゾルを塗布・焼成したものをシリカ基材として使用した。対向拡散化学蒸着法に用いる酸化剤としてオゾン、シリカ源としてDiphenyldimethoxysilane (DPhDMOS)を用い、270℃で蒸着させた。逆浸透試験は、100ppm の硫酸水溶液を4.0MPaで供給し行った。耐酸性は、強酸である昨年度より硫酸濃度を6倍程度高い70%硫酸水溶液を用いて検討を進めた。アルミナ基材上のシリカ逆浸透膜では、48時間浸漬後に酸阻止性能を示さなくなったが、シリカ基材上のシリカ逆浸透膜では、100時間近く浸漬しても酸阻止性能を示した。中間層をシリカに変更することで耐酸性を大幅に向上させることが出来た。次に、透過流束の向上を検討した。φ3mm基材とφ10mm基材上のシリカ逆浸透膜を比較した結果、全透過流束が5.8 kg m-2 h-1 から17.6 kg m-2 h-1 へと約3倍に向上した。この原因を、酸素雰囲気、およびオゾン雰囲気でのDPhDMOS加水分解粉末の熱分解挙動より分析した。その結果、支持体厚みの厚いφ10膜では、反応中の有効オゾン濃度が減少し、フェニル基の残存量が増加することで、高い透過流束を実現できたと結論した
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