最近次世代太陽電池として注目されているハイブリッド型太陽電池は,半導体ナノ粒子を集積した多孔質電極と電荷輸送を担う有機化合物からなる。半導体ナノ粒子集積薄膜からなる電極構造の最適化に関する検討はなされていない。そこで,化学工学および粉体工学の観点から,粒子集積薄膜構造の評価技術を確立すると共に,粒子集積薄膜の構造制御を試み,ハイブリッド型太陽電池の光電変換効率を高めるために,用いる粒子の形状も考慮した粒子集積薄膜作製方法およびその操作条件を見出すことを目的とした。 電気泳動堆積法における堆積状態を制御する操作条件の探索を実施した。懸濁液の導電率と粒子の移動度を実測すると,電極に向かう粒子の移動量がHamakerの式で計算できる。本研究で採用している数%の含水率のエタノール溶媒中にチタニア粒子を分散した懸濁液条件では,粒子の電極への堆積量は,Hamakerの式で求めた粒子移動量にほぼ等しいことが判明した。粒子薄膜の空隙率は泳動するチタニア粒子の大きさによって変えることができ,粒子径が大きいほど,空隙率は大きくなった。粒子経が大きいほど,粒子帯電量が増加し,粒子集積時に粒子間反撥が増え,空隙率が大きくなるものと考えられる。また,大きさの異なる2種類の粒子の混合懸濁液を用いると,膜厚方向に著しい空隙率分布を付けることができた。 ポリエチレングリコール(PG)をチタニア粒子懸濁液に混合し,スピンコート法でチタニア粒子薄膜を作製し,その空隙贈構造を変化させた。このチタニア粒子薄膜に,一定量のペロブスカイト溶液をスピンコートし,ペロブスカイト太陽電池(PSC)を作製した。空隙率が増加すると,チタニア粒子薄膜層表面に析出するペロブスカイト結晶の量が減少した。しかし,ペロブスカイト結晶がチタニア粒子層に浸透し,光電変換効率が最大になる組み合わせが存在すると考えられた。
|