研究課題/領域番号 |
15K06550
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研究機関 | 奈良工業高等専門学校 |
研究代表者 |
直江 一光 奈良工業高等専門学校, 物質化学工学科, 教授 (00259912)
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研究分担者 |
石神 徹 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (70595850)
今井 正直 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (80193655)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ピッカリングエマルション / 熱応答性 / ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
本研究では、ピッカリングエマルションに熱応答性を導入することによって反応場であるエマルション界面の特性を温度制御し、反応・分離に最適なメンブレンリアクターシステムの構築を目的とした。そこで、H28年度は以下の項目について研究を実施した。 1) 前年度に得られたサブミクロンオーダーのナノ粒子エマルション系に生体ポリマー(gelatin、agarose)を導入し、その安定性を実験的に調べたところ、安定性を高めたエマルション系の調製に成功した。また、100 マイクロメートル以上のサイズが大きいエマルション系の場合、生体ポリマーの導入によりW/OエマルションからO/Wエマルションに転相することと明らかとなった。さらに熱により物性が大きく変化する生体ポリマー(gelatin)の場合、熱によりその安定性を制御することが可能であることをわかった。また、マイクロ粒子を用いたエマルション系においても生体ポリマー導入により同様の結果が得られることを明らかにした。このように生体ポリマーの導入によってピッカリングエマルション系の安定化を達成するとともに、さらに熱によってその安定性の制御が行えたことは、熱応答性を有する酵素キャリアーを目指す本研究にとって重要な成果である。 2) 得られたナノ粒子Pickeringエマルション系においてモデル酵素反応(加水分解酵素リパーゼによる油脂の加水分解)を行い、酵素活性が発現することを示した。さらに基質濃度の影響について検討し、速度論的解析を行うことにより本系における速度パラメーターを算出した。これらは本系における反応メカニズムの解析及び本系を工学的に利用する上で重要なデータとなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度では、上述の概要に示すように、成果として(1) 前年度に得られたサブミクロンオーダーのナノ粒子エマルション系に生体ポリマーを導入し、安定性を高めたエマルション系の調製に成功した。さらに(2)熱により物性が大きく変化する生体ポリマーの導入により、熱による安定性制御が可能であることを見出した。また、(3) 得られたナノ粒子Pickeringエマルション系においてモデル酵素反応を行い、酵素活性が発現することを示すとともに、基質濃度の影響について検討し、本系における速度パラメーターを算出している。このようにほぼ当初計画通りの成果が得られており、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、Pickeringピッカリングエマルション系における生体ポリマー導入の影響について調べるとともに、エマルション滴回収条件の探索を行い、本系を用いた新規メンブレンリアクターシステムの構築を目指す。 具体的には、(1) 生体ポリマーを導入したPickeringエマルション系における流動条件下でのエマルション滴径測定を行い、本系におけるエマルションの分散挙動について調べる。(2) 生体ポリマー導入エマルション滴の回収条件の探索を行う。(3) 生体ポリマー導入エマルション系においてリパーゼ反応を行い、生体ポリマー導入の影響について検討する。これらの知見を基に、新規メンブレンリアクターシステムの構築を目指す。
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