研究課題/領域番号 |
15K06551
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
金久保 光央 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 化学プロセス研究部門, 研究グループ長 (70286764)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | NMR / パルス磁場勾配法 / 自己拡散係数 / 電気伝導度 / 気液平衡 / イオン液体 / CO2 |
研究実績の概要 |
以下、研究課題2項目についてそれぞれ概要を記載する。 1)幅広い温度領域におけるpfg-NMR法による自己拡散係数の測定 自己拡散係数の測定に当たり、-40 ~120 ℃においてプローブ内の実際の試料温度と試料部直下の熱電対の読みとの補正を行った。室温近傍では試料温度は±0.05 ℃の温度揺らぎ内で制御可能なことを明らかにした。 幅広い温度範囲(0 ~120 ℃)において、pfg-NMR法(パルスシークエンスはSpin-Echoを使用)を用いて基準物質(水、トルエン、ドデカン)の自己拡散係数を測定し、既報の値から磁場勾配パルスの強度を求めた。磁場勾配パルスの強度は、温度にほとんど依存せず、ほぼ一定の値(±3 %以内)を取ることを確認した。ただし、高温条件では重力方向の温度分布により対流が発生しやすく、サンプルの高さを短くすること(2 mm以下)が重要であることが分かった。また、サンプル固有の自己拡散係数と位相緩和時間に対して、種々のパラメータ(磁場勾配パルスの強度、磁場勾配パルスの幅、および拡散時間など)の最適条件を導出した。これらに基づき、共同研究先(豪州New South Wales大・Harris教授、NMR Steday Gradient法)と共通のイオン液体試料の自己拡散係数を測定したところ、誤差範囲内で一致し、測定手法と装置の健全性が確認された。 2)気液平衡下におけるガス吸収液の電気伝導度の測定 既存の高圧セルを用いて、CO2を加圧、吸収させた1-アルキル-3-メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート([Cnmim][BF4], n = 4, 6, 8)の電気伝導度を決定した。電気伝導度はCO2吸収に伴い著しく増加し、飽和圧力以降はほぼ一定となった。アニオン([BF4]-)を固定した場合には、CO2が電気伝導度の変化に及ぼす効果はカチオン側鎖の違いにほとんど依らないことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既存の装置類はpfg-NMRを始めとして故障なく稼働し、研究も当初の計画通りにほぼ進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
1)自己拡散係数の測定については、初年度に実施したキャリブレーションの結果を利用して、化学吸収機能を有するCO2吸収液などの輸送物性評価を進める。また、2)気液平衡下におけるガス吸収液の電気伝導度の測定は、イオン液体の構造(特にアニオン種)を変化させてCO2吸収効果を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究はほぼ計画通りに進んだが、当初予定していた技術補助員は雇用せず、人件費の支出が無かった。そのため、本年度の予算の一部を次年度に繰り越すことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
技術補助員の人件費として支出し、研究計画を加速する。
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