前年度は,水蒸気で加熱している縦型のサーモサイフォン・リボイラーにおいて,リボイラー内の伝熱配管の内側におけるファウリング抵抗を推定する手法を開発し,リボイラーの詳細モデルを含むダイナミック・シミュレーションで生成したデータに適用することによってその有効性を検証した.今年度は,より実際的な応用を目指して,共同研究先の実プラントにおける実在の蒸留塔における3年分の運転データに対して,考案した手法によって構築したハイブリッドモデルを適用してファウリング抵抗の経時変化を算出し,その有効性を検証した.このことによって,開発した手法が,運転条件や測定変数の限られた実プラントにおいても実際に適用可能な一般的かつ実用的なモニタリング手法となっていることが明らかとなった.この成果については,この分野で世界で最も先進的な国際会議であるHeat Exchanger Fouling and Cleaning Conference 2017 にて発表した. なお,今年度は,水蒸気による加熱の他に,クエンチオイルや他のプロセス流体によって加熱するタイプのリボイラーについても検討したが,検討を進める途中で物理モデルを構築する際に物性値や組成が必要となった.しかし,実際のプロセスへの適用を考慮すると,これらの値は未知または不正確なことが多く用いるべきではないとの判断から,詳細なハイブリッドモデルを構築することはできないと判断した.
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