研究実績の概要 |
超臨界二酸化炭素中でのポリ乳酸合成反応について、3種類の触媒について反応温度、反応時間等に対するポリ乳酸収率を比較した。ポリ乳酸収率は、生成ポリ乳酸中の残存モノマー量を測定することで求めた。その結果、モノマーであるL-ラクチド濃度を反応容器体積に対して20wt%、触媒濃度をモノマーに対して0.5wt%の条件において、反応時間1時間以内で収率が95%以上となる反応温度の下限は、従来のオクチル酸スズ(Ⅱ)触媒を用いた場合は150℃、ジアザビシクロウンデセン(DBU)触媒では60℃、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)触媒では100℃と、DBU触媒<DMAP触媒<スズ触媒の順となること、この時の生成ポリ乳酸の重量平均分子量はDMAP触媒(約6000)<DBU触媒(約60000)<スズ触媒(約230000)となることが明らかになった。更にDMAP触媒を用いたポリ乳酸合成におけるポリ乳酸生成反応速度解析を行った。本実験ではポリ乳酸収率が反応時間経過に伴って増加する間は、生成ポリ乳酸の重量平均分子量も反応時間とともに増加していたことから、ポリ乳酸収率が増加している間は重合反応のみが進行すると仮定して反応速度解析を行った。解析に用いた反応温度は80℃から120℃、反応時間は60分までの範囲である。その結果、昨年度のDBU触媒を用いた際の反応速度解析と同様に一次反応でL-ラクチドの開環重合を表すことが出来た。また重量平均分子量はポリ乳酸収率が一定になる60分以降も反応時間の経過とともに増加したが、ある時間以降では反応時間とともに減少したことから、L-ラクチドの開環重合によるポリ乳酸合成反応は、重合反応と生成ポリ乳酸の分解反応の平衡反応と考えられる。
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