研究課題
現状のメタボローム解析技術により取得できる定量情報は,「相対定量」に制限されているため,細胞内の精確な代謝物濃度の決定には至っていない.また,相対定量情報では,他施設での異なる分析装置や異なる分析手法で取得したデータと直接比較検証できないため,生理学的・生化学的考察を深めることが困難である.そこで,当該研究では,原核細胞から真核細胞に至る幅広い生物種に適用可能な包括的な安定同位体標識代謝物の調製法の開発を軸に,試料調製,高感度定量メタボローム分析,定量データ解析手法を含む「in vivo安定同位体標識代謝物を用いた定量メタボロミクス技術の開発」に取り組む.平成29年度は,超臨界流体クロマトグラフィー三連四重極型質量分析 (SFC/TQMS) を用いた新規のワイドターゲット定量リピドーム分析法の開発に取り組んだ.各種SFC分離条件の検討を行った結果,DEAカラムによるSFCが,22種の脂質クラスを短時間 (20分) かつ高分離できることを見出した.また,質量分析では識別できないリゾリン脂質や中性脂質 (MAG, DAG) の位置異性体についても分離分析できることが分かった.さらに,各種脂質クラスのフラグメンテーションを詳細に解析し,適切な多重反応モニタリング (MRM) を設定することで,ジアシルリン脂質の構造異性体 (PC 16:0/20:4と PC 18:2/18:2など) を質量分離できることも明らかにした.各脂質クラスの個々の脂質分子に対して添加回収試験を実施したところ,回収率70%以上を達成したことから包括的かつ定量的な脂質分析が実施できることが示された.構築した当該分析法を用いることで,動物細胞や各種動物組織,血漿,エクソソーム試料から,約300~600種程度の脂質分子の定量情報が取得可能となった.
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