研究課題/領域番号 |
15K06563
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中山 哲 北海道大学, 触媒科学研究所, 准教授 (10422007)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 不均一系触媒 / 第一原理シミュレーション |
研究実績の概要 |
本課題では、不均一系触媒反応における熱揺らぎと溶媒の効果に着目し、それらが触媒活性に及ぼす影響を具体的な例を基に検討し、触媒反応の新しい観点からの原理抽出を目指している。第一原理分子動力学法を用いて、本年度は酸化セリウム触媒の酸・塩基特性に関する研究を行った。 酸化セリウムは特異な酸・塩基特性や酸化還元特性を示すために、幅広い分野で利用されている。最近では、低温条件下での液相有機合成反応に有効であることが示されており、触媒としての活用範囲がますます広がってきている。しかし、未だ表面の活性点(酸・塩基点)の役割については不明瞭な部分が多い。 本研究では、水中における有機合成反応をターゲットとし、水/酸化セリウム界面における水分子の構造やダイナミクスと酸・塩基の協働作用に着目した酸化セリウム触媒の機能について、第一原理シミュレーションを用いて検討した。 まず、第一原理分子動力学シミュレーションにより、水/酸化セリウム界面の状態を解析した。トラジェクトリの解析により、吸着している水の半数程度が解離していること、また、プロトン移動が起こりやすくなっていることがわかり、界面付近で水分子が活性化されていることが観測された。 次に、2-cyanopyridineの吸着状態とアミドへの水和反応を検討した。最近、この水和反応が低温(30℃)でも高活性で起こることが報告されている。この反応メカニズムと基質選択性を議論するために、2-cyanopyridineの水中での吸着状態を調べたところ、pyridine環のN原子はCe原子と強く結合し、CN基のN原子も表面のCe原子と結合することで、二点により吸着状態を保っていることがわかった。また、CN基のN原子のみでの結合では弱いため、水中に解離してしまうこともわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
不均一系触媒の熱揺らぎと溶媒効果に関しての研究に取り組んでおり、具体的な系として酸化セリウム触媒による水中有機合成反応をターゲットとしている。反応メカニズムの解析を通じて触媒機能に関する知見を得ており、当該研究目的に沿って一定の成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、酸化セリウム触媒における液相有機合成反応をターゲットとする。今後は自由エネルギー計算を基に反応メカニズムの定量的な議論を進める。得られた成果は学会や誌上にて積極的に発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
九州大学と京都大学の大型計算機の使用料として一部計上していたが、希望通りのノード数が割り当てられなかったために一部経費が使用できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度も同様に大型計算機の利用料として経費を使用するが、ノード数を増やす予定であり、また他機関の大型計算機も新規に利用する予定である。
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