研究課題/領域番号 |
15K06566
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
市橋 祐一 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (20362759)
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研究分担者 |
西山 覚 神戸大学, 工学研究科, 教授 (00156126)
谷屋 啓太 神戸大学, 工学研究科, 助教 (30632822)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ベンゼンの気相接触酸化反応 / フェノール合成反応 / 銅担持ゼオライト触媒 / ルイス酸点 / 骨格外アルミ / 量子化学計算 |
研究実績の概要 |
ベンゼンの酸素による気相酸化反応でのフェノール合成法は低コストな合成法として、その実用化が期待されている。当研究室においてH型ZSM-5ゼオライトに銅を含浸法で担持した触媒がこの反応において有効であり、かつチタンを助触媒として担持することで高い活性を示すことを明らかとしてきた。当該研究ではTi以外の金属種の添加効果について調べ、ジルコニアやアルミをCu/HZSM-5触媒に添加することで、Ti同様に活性が向上することを明らかとした。また特にAlを添加した場合はTiを添加した場合と同程度の活性向上が見られ、それらの要因を検討するためFT-IR測定を行ったところ、骨格外に存在するAlがルイス酸点として機能し、このルイス酸点でベンゼンが吸着され、Cu上で活性化された酸素と反応することでフェノールが生成することが明らかとなった。これらの結果をもとに、量子化学計算にて詳細な反応機構を検討した。Cu 原子への酸素の吸着には Cu原子に対して酸素分子の酸素1原子が末端から吸着するend-on型の吸着と酸素分子の酸素2原子が平衡に吸着するside-on型の吸着の2種類が考えられる。DFT計算の結果からend-on型で吸着した酸素種がベンゼンと反応することが示唆された。さらに、このCu上で活性化された酸素分子が、ベンゼンのH原子を攻撃して反応が進行するのか、それともC原子を攻撃して反応が進行するのかDFT計算にて検討した。結果、C原子ではなくH原子を攻撃して、H原子と吸着酸素の酸素原子が入れ代わるように、一段階でフェノールが生成する機構がエネルギー的に有利であることがわった。以上の結果から、概ね反応機構が推測され、フェノールの生成には酸素の吸着サイトであるCuとベンゼンの吸着サイトであるルイス酸の近い位置での共存が必須であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定である、新規金属添加Cu/HZSM-5触媒の開発とキャラクタリゼーションは予定よりも少し早く進んでおり、概ね目処が立っている。ただし、Cu/Ti/HZSM-5触媒への第三金属の添加に関してはAlが有力であるが、今のところ最適条件が見つかっておらず、両方を担持することで、かえって活性が悪くなる傾向にある。また、開発した触媒のDFT計算であるが、小さいモデル系ではあるが結果が得られており、当初予定よりも早く進行している。ただし、これをゼオライトの細孔に固定化したモデルに展開して、再度計算をしたいのではあるが、こちらは極端に計算に時間がかかり、収束する条件も難しいためかなり難しいと考えている。計算端末の数を増やし平行して計算を行っている。最後に開発触媒の実用条件下での高活性化と水蒸気による失活抑制挙動の検討であるが、水蒸気による失活の抑制が、反応過程で生成する触媒表面への蓄積炭素種の抑制にあることはつきとめている。ただし、その詳細な機構に関しては明らかでなく、水蒸気による蓄積炭素種の除去過程を調べているところである。また、実用条件下での反応のため、現在使用している粉末触媒(Cu/HZSM-5やCu/Ti/HZSM-5)のハニカムや錠剤整形された担体への担持を試みており、触媒の実用化に向けて検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
概ね順調に進行していることから、当初予定の実験計画に沿って研究を進める予定である。ただし、量子化学計算においては、昨年度計画通り小モデルによる大まかな反応機構の推定は完了しており、今後は大きなモデルを用いた系で計算をすすめる。ただし、モデルを大きくすることで極端に負荷が大きくなるため、反応機構全容を大モデルにて計算するには時間がかかるかも知れないと考えている。次に、実用化の検討であるが実用化触媒としてハニカム状の担体やビーズ、錠剤等への触媒の担持をまずは考えており、それらの触媒開発を行っていく予定である。また、同時に水蒸気添加による失活抑制効果の検討をさらに詳細に検討していくことで実用化に向けて、実現可能であるかと考えている。
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