研究課題/領域番号 |
15K06567
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
西山 覚 神戸大学, 工学研究科, 教授 (00156126)
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研究分担者 |
市橋 祐一 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (20362759)
谷屋 啓太 神戸大学, 工学研究科, 助教 (30632822)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | メタン / 二酸化炭素 / ドライリフォーミング / 水素製造 / 二酸化炭素削減 / ニッケル触媒 / 活性劣化 / 電子顕微鏡観察 |
研究実績の概要 |
平成27年度に引き続きAl2O3担持Ni触媒を用いてメタンのドライリフォーミング反応における炭素質蓄積による劣化挙動を検討した. 昨年度の検討で,担持Ni触媒上に生成する炭素質には,800 Kで酸素により燃焼除去される炭素質と900 K以上の高温にしないと除去されない炭素質の2種類が存在し,後者の炭素質が増大すると触媒が劣化することがわかっている.触媒上には,反応雰囲気下で劣化を引き起こす炭素質と,そうでないものが生成することがわかった.平成28年度では,その2種類の炭素質の具体的な違いを,走査電子顕微鏡観察および高分解能透過電子顕微鏡観察を組み合わせることで,詳細に検討した. メタンのドライリフォーミング反応において,長時間反応後劣化した触媒上の炭素質は,昇温酸化実験(Temperature Programmed Oxidation of Used Catalyst)で酸化反応性の異なる2種の炭素質が存在することを確認した.その触媒の走査電子顕微鏡像を観察すると,表面上にフィラメント状の炭素質が多量に存在することがわかった.800 Kまで昇温酸化した後に,再度観察すると,表面上に炭素質が残存しているにも関わらずフィラメント状炭素質が完全に消失していることがわかった.このことは,活性劣化をもたらす炭素質がフィラメント状炭素ではなく,明確な構造を持たない,いわゆるアモルファス状炭素質であることを示唆する.フィラメント状炭素質を高分解能透過電子顕微鏡を用いて調べたところ,フィラメント状炭素質は,その構造が多層状炭素ナノチューブ(Multi-Walled Carbon NanoTube: MWCNT)であることが確認された.このナノチューブは,反応条件下でCO2と容易に反応するため,本反応の中間体であることが強く示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電子顕微鏡観察を用いて,当初目標としていた2種類の炭素質の構造上での差異について明らかにすることができた.さらに,劣化を引き起こす炭素質が,一般的に言われているフィラメント状炭素質(ウィスカー状炭素)ではなく,従来は反応性に富むと考えられていたアモルファス炭素であることを明らかにした.活性劣化を制御する上で極めて重要な知見が得られたと判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
高分解能透過電子顕微鏡を引き続き行い.炭素質の構造についての詳細検討を行なう.更に加えて,炭素質の生成しやすい部位,構造などの触媒上の局所的な特徴についても検討したい.あわせて,反応条件を変え2種類の炭素質の生成挙動の違いを検討し,それらの生成メカニズムについても踏み込んで検討する.可能であれば,動力学的検討も実施したい.
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