平成29年度は下記の2項目に関して重点的に研究を行った. (1)シアノ錯体熱分解法(CN法)で調製したペロブスカイト型酸化物の低温触媒反応:CN法で合成したペロブスカイト型酸化物がシアノシリル化反応に高い活性を示したので,ペロブスカイト型酸化物を他の液相反応(Diels-Alder反応,Knoevenagel反応など)へ応用し,その触媒活性を調べた.シアノシリル化反応以外で,ペロブスカイト型酸化物が顕著な触媒活性を示した反応系は認められなかったが,ペロブスカイト型酸化物触媒は,Bronsted酸が関与する反応および塩基点が関与する反応に活性を示すことがわかった.活性がまだ低いので,活性向上のために金属担持などの修飾等が必要であると考えられる. (2)CN法で調製したペロブスカイト型酸化物のPM(粒子状物質)燃焼反応:近年,大気汚染の原因である PMの接触除去プロセスが検討されている.本研究では低温触媒反応系の開発の一環として,低温PM除去触媒の開発を試みた.多核金属シアノ錯体前駆体(La[Fe(CN)6]・nH2O)にAgを導入してシアノ錯体熱分解法により調製したAg担持ペロブスカイト型酸化物触媒(Ag/LaFeO3)が,これまで最も低温活性が高いとされているAg/CeO2触媒と同等のPM燃焼活性を示すことを見出した.さらに、①通常の含侵法(ペロブスカイト型酸化物を調製後に含侵担持)で調製した触媒ではAg添加効果は認められず,CN法で調製した触媒でのみAg添加による低温活性化が認められること,②含侵法で調製した触媒ではペロブスカイト表面上に平均直径60-100 nmのAg粒子が生成するのに対し,CN法で調製した触媒では10 nm前後のAg粒子がぺロブスカイト表面に高分散していること,③CN法で調製した触媒は繰り返しの使用において高い耐久性を示すこと、などを明らかにした.
|