研究実績の概要 |
本研究は貴金属不要な安価で高効率な水素製造触媒の開発を目的として、規則型 Ni 基金属間化合物のナノ粒子の創製及び触媒特性の解明を行う。従来の金属ナノ粒子触媒調製によく用いられている金属塩などを液相中で還元する方法は、低温で行うため、規則構造の形成は難しい。そのため、規則構造を持つ金属間化合物のナノ粒子の触媒特性に関する知見は極めて少ない。本研究は、規則構造を持つ金属間化合物のナノ粒子という新触媒を合成することにより、従来の金属や合金ナノ粒子触媒にない新しい水素製造触媒の発見が期待できる。 平成27年度には、有望な金属間化合物の選定及びナノ粒子の創製を行った。化合物の選定について、酸化物生成標準自由エネルギーが Ni に近い元素との金属間化合物に着目し、エリンガム・ダイアグラムを用いて有望な候補(Ni-Sn系,Ni-V系)を選定した。ナノ粒子の作製は熱プラズマ蒸着法を用いた。作製したナノ粒子のキャラクタリゼーションは、XRD、比表面積測定(BET 法)、TEM-EDS、SEM-EDSなどにより行った。その結果、Ni3Sn, Ni3Sn2, Ni3Sn4及びNi3V各化合物のナノ粒子の作製に成功した。これらのナノ粒子の粒径は主に数nm~100nmの範囲にある。BET 比表面積は10m2/g程度である。さらに、Ni3SnとNi3Vのナノ粒子のメタノールの分解反応に対する触媒特性を測定した。Ni3Snは高い活性、安定性及び水素選択性を有することが分かった。
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