研究実績の概要 |
燃料電池の普及には、燃料となる水素を安価で効率よく作り出す必要がある。現在、水素はRu、Pt、Ni、Cuなどの金属触媒を用いて、主に化石燃料の改質反応により製造されている。しかし、貴金属は高価であり、Ni,Cuは触媒性能が不十分である。貴金属不要でかつ高性能な水素製造触媒の開発は不可欠である。規則構造を持つ金属間化合物は、純金属や合金では得られない物性(例えば、耐熱性、形状記憶、超伝導、水素吸蔵など)を示す。このような規則構造を反映した表面の原子配列や電子状態には特異な触媒特性が期待でき、これまで金属間化合物を触媒として応用する研究は極めて少ないが、新しい触媒材料としての可能性が示唆されている。 本研究は貴金属不要な安価で高効率な水素製造触媒の開発を目的として、規則型Ni基金属間化合物のナノ粒子の創製及び触媒特性の解明を行う。ナノ粒子の創製には、超高温熱プラズマ法を用い、ナノサイズかつ規則構造形成条件を確立する。触媒特性はメタノール及びメタンの分解反応、改質反応を取り上げ、触媒特性に及ぼすナノ粒子の規則構造、形態(サイズ、形状など)、及び化学組成の影響を検討し、金属間化合物ナノ粒子の触媒特性発現機構の解明を図る。 平成29年度には、前年度見出した有望なNi3Sn金属間化合物ナノ粒子を用いて、メタノールの水蒸気改質に対する詳細な触媒特性(触媒活性と選択性の時間依存性、安定性)を評価した。さらに、触媒反応前後のNi3Snナノ粒子触媒の微細組織を透過電子顕微鏡で解析し、結晶構造をX線回析測定で調べ、触媒特性とナノ粒子の微細組織、結晶構造、粒子形態との関係を検討した。規則構造を持つ金属間化合物ナノ粒子は水素製造反応触媒としての可能性を明らかにした。
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