研究課題/領域番号 |
15K06576
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
田巻 孝敬 東京工業大学, 資源化学研究所, 講師 (80567438)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 分子認識材料 / DNA / アプタマー / 感温性ポリマー / バイオセンサー / G四重鎖 |
研究実績の概要 |
核酸による分子認識は、リボスイッチに代表されるように生体内における反応制御で重要な役割を果たしている。核酸の分子認識性をバイオセンサーやドラッグデリバリーシステムへ展開するためには、DNAの分子認識に伴うナノスケールの構造変化をマクロスケールの変化へ増幅する必要がある。本研究では、DNAの分子認識能を活用し、感温性ポリマーpoly(N-isopropylacrylamide) (pNIPAM)のアクチュエータ機能と協調させた分子認識材料に関する研究を行う。 DNAを側鎖へ化学的に結合した共重合ポリマーDNA-pNIPAMについて、これまでに本研究グループでは、標的分子の認識に伴うDNA二本鎖の解離をトリガーとして、DNA-pNIPAMが分散状態から凝集状態へと移行することを示している。本年度は、新しい分子認識モードの発現、すなわち、分子認識に伴いDNA-pNIPAMが凝集状態から分散状態へと移行する標的分子捕捉モードの発現へ向けた検討を行った。この標的分子捕捉モードでは、DNA-pNIPAMの初期状態は凝集状態にあり、標的分子を認識してもDNA二本鎖が解離せず、DNA-pNIPAMへ標的分子が捕捉されることにより、分散状態へと移行する。はじめに、初期状態の検討を行った。従来研究において、構造が剛直な二本鎖DNAではDNA-pNIPAMが凝集し、柔軟な一本鎖DNAでは分散することが分かっている条件下において、二本鎖が余剰な一本鎖を有している場合は分散状態を示したが、余剰な一本鎖内でグアニン(G)四重鎖構造を取る場合には、DNA-pNIPAMが凝集することを明らかにした。また、相補鎖形成部位の塩基数について検討し、標的分子を認識してもDNA二本鎖が解離しない条件を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新しい分子認識モードである標的分子捕捉モードの発現へ向けて、必要となる初期状態の制御、および分子認識に伴うDNA二本鎖解離の抑制に成功したことから、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
標的分子捕捉モードの発現へ向けた検討を継続し、H27年度の検討において初期状態で凝集状態をとることが明らかになった余剰一本鎖部位にG四重鎖構造を有するDNA-pNIPAMに対して、標的分子を添加して凝集・分散挙動へ与える影響を評価する。明瞭な分子認識挙動が得られない場合には、標的分子の認識へ影響するDNAの塩基配列や、DNA-pNIPAMの凝集・分散性へ影響するコンジュゲート比率および外部イオン濃度について検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
交付内定が年度途中であったため、一年分を想定していた当初計画とは異なる資金執行となった。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品として、DNAオリゴマーや、ポリマー合成で用いる試薬類、ガラス器具、ガス類を購入する。 また、成果発表のための旅費、印刷費、論文投稿時の英文校正費を計上している。
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