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2016 年度 実施状況報告書

遊走や接着に基づく自己組織化現象の理解と活用

研究課題

研究課題/領域番号 15K06580
研究機関大阪工業大学

研究代表者

長森 英二  大阪工業大学, 工学部, 准教授 (70394898)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード細胞集塊 / 組織工学 / 可視化 / 画像処理 / 複雑組織設計 / 骨格筋筋芽細胞 / 血管内皮細胞 / RD細胞
研究実績の概要

複雑組織の製造を可能にする次世代型組織工学を切り拓くためには、異種細胞を混ぜ合わせた細胞集塊内を観察し、個々の細胞種の遊走や接着に起因する自律的な棲み分け現象(自己組織化)を理解・操作する手法論が必要となる。本研究では昨年度までに、積層細胞シートを可視性に優れた薄い(厚み100um未満の)板状集塊として使用することで、共焦点レーザー走査型顕微鏡にて三次元的な解像度を保ったまま、経時的に観察が可能である(4次元観察)ことを示してきた。これは従来から使用される球状集塊(スフェロイド)では達成不可能である。積層細胞シートを24ウェルプレート上で再現性良く積層し、観察ターゲットとする細胞の集塊内の動的な挙動を定量的に明らかにする画像処理システムについても報告した。また骨格筋筋芽細胞組織内シート内での線維芽細胞、血管内皮細胞の挙動を明らかにし報告した。本年度は同組織内に混在させる異種細胞としてガン化した筋芽細胞(横紋筋肉腫由来)とされるRD細胞が組織内で活発に動き回り組織を破壊する様子(悪性軟部腫瘍におけるガン細胞の挙動をミミックしているかもしれない)を動的に観察し報告した。また組織内に形成した血管内皮細胞ネットワークの挙動を制御するために、積層シート内部に動きが緩慢な間葉系幹細胞シートを挿入することで、血管内皮細胞ネットワークから内皮細胞が離脱・ネットワーク崩壊に至る現象を抑制できることを明らかにし、報告した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

積層細胞シートを可視性に優れた板状集塊として選定し、組織培養および解析の雛型として用いるための基盤技術を構築し、これを実際に用いた検証がスタートできている。これまでに筋芽細胞組織内における線維芽細胞、血管内皮細胞、間葉系幹細胞といった筋組織形成に重要と思われる細胞種の挙動を明らかにし、これを活用することで一部の細胞種の挙動制御が可能であることも示すことが出来ている。創薬のターゲットとして重要な横紋筋肉腫の筋芽細胞組織内の挙動についても明らかにし、遊走や接着を指標とした創薬の可能性を示すことも出来ている。以上の事から、本研究は申請計画に沿って順調に進捗している。

今後の研究の推進方策

骨格筋筋芽細胞組織内における混入異種細胞の挙動を明らかにするとともにこれを制御する研究を展開してきた。今後は薬剤添加によって組織を形成する細胞および異種細胞の挙動(遊走や接着)を制御することが可能であるか検証する。また現在検討対象としている組織は骨格筋の未分化細胞である筋芽細胞により形成されているが、この筋芽細胞組織の筋分化についても試行、検討し、混入異種細胞にとっての足場細胞の挙動の変化や、ここに混入する異種細胞の挙動の変化を明らかにすることで、複雑骨格筋組織の設計・製造の実現につながる基盤的な成果を得ていきたい。

  • 研究成果

    (18件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 6件) 図書 (5件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Design and fabrication of devices for investigating cell-sheet stretch2017

    • 著者名/発表者名
      Yang Liu, Yoshihiro Ojima, Masanobu Horie, Eiji Nagamori, Hideaki Fujita
    • 雑誌名

      BioChip Journal

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • DOI

      10.1007/s13206-017-1301-1

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Culture Medium Refinement by Dialysis for the Expansion of Human Induced Pluripotent Stem Cells in Suspension Culture2017

    • 著者名/発表者名
      Suman Chandra Nath, Eiji Nagamori, Masanobu Horie, Masahiro Kino-oka
    • 雑誌名

      Bioprocess and Biosystems Engineering

      巻: 40 ページ: 123-131

    • DOI

      10.1007/s00449-016-1680-z

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Disruption of myoblast alignment by highly motile rhabdomyosarcoma cell in tissue structure2017

    • 著者名/発表者名
      Li Menglu, Nagamori Eiji, Kino-oka Masahiro
    • 雑誌名

      Journal of Bioscience and Bioengineering

      巻: 123 ページ: 259-264

    • DOI

      10.1016/j.jbiosc.2016.08.002

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] ノーベル賞と化学工学~iPS細胞~2017

    • 著者名/発表者名
      長森英二
    • 雑誌名

      化学工学会誌

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

  • [雑誌論文] 三次元組織内における動的な細胞挙動を観察・理解し複雑組織設計に活かす2016

    • 著者名/発表者名
      長森英二
    • 雑誌名

      生物工学会誌

      巻: 94 ページ: 23-26

    • 謝辞記載あり
  • [学会発表] バイオプロダクションにおける膜工学的アプローチ2017

    • 著者名/発表者名
      長森英二
    • 学会等名
      平成28年度神戸大学先端膜工学研究推進機構春季講演会「膜工学サロン」
    • 発表場所
      神戸大学工学部
    • 年月日
      2017-03-13
    • 招待講演
  • [学会発表] 動物細胞大量培養技術の基本とヒト人工多能性幹細胞(hiPS細胞)大量調製への展開・最新動向2016

    • 著者名/発表者名
      長森英二
    • 学会等名
      CMCリサーチセミナー「再生医療の産業化に向けた調製・製造・3Dプリンティング技術」
    • 発表場所
      ちよだプラットフォームスクエア(東京)
    • 年月日
      2016-12-15
    • 招待講演
  • [学会発表] “元気な”骨格筋組織の構築2016

    • 著者名/発表者名
      長森英二
    • 学会等名
      関西再生医療産業コンソーシアム(KRIC)第五回テーマ別勉強セミナー
    • 発表場所
      大阪府立男女共同参画・青少年センター
    • 年月日
      2016-12-13
    • 招待講演
  • [学会発表] A Cell-sheet Extension System for Microscopic Observation of Cellular Mechanosensing in individual Living Cells2016

    • 著者名/発表者名
      Yang Liu, Yoshihiro Ojima, Masanobu Horie, Eiji Nagamori, Masahito Taya and Hideaki Fujita
    • 学会等名
      Young Asian Biochemical Engineer's Community 2016
    • 発表場所
      宮崎シーガイア
    • 年月日
      2016-10-27 – 2016-10-29
    • 国際学会
  • [学会発表] バイオメディカル分野における化学工学の社会実装の現状2016

    • 著者名/発表者名
      長森英二
    • 学会等名
      化学工学会第48回秋季大会特別シンポジウム・社会実装への化学工学の挑戦
    • 発表場所
      徳島大学
    • 年月日
      2016-09-07
    • 招待講演
  • [学会発表] 積層細胞シートを培養・解析雛型とした組織内混入異種細胞の挙動理解と制御2016

    • 著者名/発表者名
      長森英二
    • 学会等名
      化学工学会第48回秋季大会
    • 発表場所
      徳島大学
    • 年月日
      2016-09-06
    • 招待講演
  • [学会発表] 積層細胞シートを培養・解析雛型とした組織内混入異種細胞の挙動理解と制御2016

    • 著者名/発表者名
      長森英二
    • 学会等名
      第55回日本生体医工学会大会
    • 発表場所
      富山国際会議場
    • 年月日
      2016-04-26
    • 招待講演
  • [図書] ~再生医療/細胞治療への実用化に向けた~動物細胞培養における分離・精製手法と自動化技術2017

    • 著者名/発表者名
      長森英二
    • 総ページ数
      5(予定)
    • 出版者
      技術情報協会
  • [図書] バイオ実験を安全に正しく行うために2017

    • 著者名/発表者名
      長森英二
    • 総ページ数
      5(予定)
    • 出版者
      化学同人
  • [図書] iPS細胞の安全・高品質な作製技術2016

    • 著者名/発表者名
      長森英二
    • 総ページ数
      8(p.183-190)
    • 出版者
      技術情報協会
  • [図書] バイオ・医療への3Dプリンティング技術の開発最前線2016

    • 著者名/発表者名
      長森英二
    • 総ページ数
      17(p.135-140、193-203)
    • 出版者
      CMCリサーチ
  • [図書] ビジュアル生命科学2016

    • 著者名/発表者名
      長森英二
    • 総ページ数
      16(p.227-242)
    • 出版者
      化学同人
  • [備考] https://www.oit.ac.jp/laboratory/room/222

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公開日: 2018-01-16  

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