抗菌、抗腫瘍、抗炎症、抗アミロイド作用、免疫抑制剤などを産生するリボソーム非依存型ペプチド合成酵素 (NRPS)やポリケチド合成酵素(PKS)は重要な創薬シーズであるが、1 つのタンパク質の中に複数のモジュールが並び、各モジュールはさらに複数のドメインからなるモジュール型酵素であり、巨大遺伝子クラスターにコードされていることから、通常のメタゲノム解析では遺伝子分離が不可能である。未知・難培養性微生物であるがゆえに入手することを諦めてきた新規モジュール型酵素を取得するために、本研究では未知・難培養性微生物のモジュール型酵素合成遺伝子の全長を取得し、その全配列をマイニングすることで、完全in vitro 合成法の道を拓くことを目的とした。シングルプライミング全ゲノムssDNA増幅法によって、モデル細菌Pseudomonas fluorescens ATCC17400 株のNRPS遺伝子をプライミングサイトとして特異的に全ゲノム増幅を行い、生じた1本鎖を2本鎖化した。そして次世代シークエンサー解析によって、2本鎖合成された増幅領域のカバレッジを評価した結果、目視では見えない量の残存1本鎖がシークエンスケミストリーを阻害し、2本鎖合成量に一致しないカバレッジに留まった。よって、混合微生物系の中から、標的細菌のゲノムのみをin situで標識し、1細胞採取後に全ゲノムを増幅するシングセルゲノミクスで、未知モジュール型酵素合成遺伝子の全長を取得する方針に変更した。そのために、標的mRNAをラベルしシグナル増幅するRNase H assisted RPPCA法を考案した。そして、in situでのmRNA特異的ラベリングに成功した。これにより、FACSによる標的細胞のソーティング、シングセルゲノミクスが可能となった。以上の結果より、モジュール型酵素の全配列をマイニングが可能になったことから、in vitro クローニングの道が拓けた。
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