研究実績の概要 |
本研究では、キトサン系バイオ凝集剤の生産機構の解明と代謝工学的手法を用いた凝集剤の高生産化を目的に、バイオ凝集剤生産菌であるCitrobacter属細菌の推定凝集剤生合成経路とドラフトゲノム解析結果から、(1)凝集剤の多糖化と膜分泌に関わるbfpABCD遺伝子群とその産物の機能解析及び(2)遺伝子破壊あるいは遺伝子導入による凝集剤の高生産化を試み、さらに、凝集剤の実生産を考慮して(3)培養液からの凝集剤の膜濃縮・回収プロセスを検討した。 平成28年度までにアミノ糖生合成関連遺伝子群glmUSMの野生株への導入あるいは糖代謝に関わる3つの遺伝子(pfkA, nagB, g6pd)の破壊が凝集力価の数倍の上昇に繋がることを確認した。一方、bfpABCDの野生株への導入では野生株を致死に至らせることも明らかとなった。ところが、平成29年度の検討で、この遺伝子群を先の遺伝子破壊株に導入したところ、安定にbfpABCD遺伝子群が保持された上に凝集力価をさらに50%程度上昇させることが明らかとなった。次いで、bfpABCDの機能解析を目的にbfpB及びbfpCを大腸菌高発現系でタンパク生産を試みたところ、BpfBのみ大量発現とその精製に成功したが、予想された凝集剤やキチンを基質とした脱アセチル活性は検出されなかった。 また、30L培養槽を用いた15Lレベルの培養と中空糸膜を用いた膜濃縮・回収プロセスを繰り返し、その安定性を確保し、かつIFO13545株より凝集活性の高いC. youngae GTC01314株でも同様の結果を得た。膜濃縮サンプルを一定条件で保持すると結晶性のマイクロファイバーが析出することを新たに見出した。この結果から、この多糖の新素材としての活用や晶析による低コスト回収法等、新たな研究の展開が期待できる。
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