研究課題
本研究は、ヘミン結晶であるヘモゾインの免疫活性化能に着目し、新規にヘミン誘導体を合成し、その免疫活性化能の評価を実施することで臨床応用に発展させることを目的として進めてきた。昨年度までに、合成したヘミン誘導体は免疫を活性化するものの、その活性化経路が当初予測していたトール様受容体は介しておらず、未知の活性化経路の可能性が示された。そのため、1年間研究を延長し、ヘミン誘導体による免疫活性化経路の解析を行った。IL-6が誘導される経路としては、尿酸結晶、シリカ粒子、またアジュバントとして使われる水酸化アルミニウムなどにより誘導されるNLRP3のインフラマソームの可能性が考えられたので、IL-1βの分泌を調べた。その結果、ヘミン誘導体によって、IL-1βはほとんど誘導されなかったことから、NLRP3インフラマソームは関与していないことが示された。次にマクロファージに対する影響を調べたところIL-6に加えてIL-12を誘導していることが示された。これらの結果から、細胞質に存在する自然免疫受容体でインターフェロンγやIL-6 の産生に関与するSTINGやIFI16などのDNA 認識受容体が挙げられ、ヘミン誘導体はこれらの受容体を介して、免疫を活性化している可能性が示唆された。マウスを用いたヘミン誘導体のアジュバンド効果について、ヘミン誘導体とオブアルブミンを一緒にマウス尾静脈に注射し、その後血液中の抗オブアルブミン抗体の量をELISA法により定量することで解析した。その結果、既存のアジュバンドであるアラムが抗オブアルブミンIgEならびにIgG1, IgG2を高く誘導するのに対して、ヘミン誘導体はIgEをほとんど誘導せず、IgG2産出のみを増強した。この結果から、ヘミン誘導体は細胞性免疫のみを誘導し、既存のアジュバンドが持つ副作用を抑えた新規アジュバンドとして機能する可能性が示された。
すべて 2018 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件)
International Journal of Nanomedicine
巻: Volume 13 ページ: 4461~4472
10.2147/IJN.S166259
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