研究実績の概要 |
ヒトES細胞並びにiPS細胞を動物由来の物質を持ちいずに、多分化能を維持した状態で培養することが必須である。現在、ES細胞とiPS細胞は、線維芽細胞上あるいはマウス癌細胞由来のマトリゲル上で培養することが一般的手法である。非動物由来の材料で、ES細胞並びにiPS細胞培養用基板を開発することは、再生医療分野で必須のプロセスである。本年度は、様々な架橋度(剛性 /弾性)を有するポリビニルアルコールハイドロゲル上にナノセグメント(細胞接着因子ペプチド(ビトロネクチン由来オリゴペプチド;KGGPQVTRGDVFTMP (VN1)、GGGGKGGPQVTRGDVFTMP (VN1G), GCGGKGGPQVTRGDVFTMP (VN2C), GKKQRFRHRNRKG (HBP1), GCGGGKKQRFRHRNRKG (HBP2C) 並びにKGGNGEPRGDTYRAY (BSP))固定化細胞培養基板上でヒトES細胞(H9)並びにヒトiPS細胞をXeno-フリー培地中で培養した。25.3 Kpaの弾性率を有するハイドロゲルは、iPS細胞並びにES細胞をXeno-free状態で長期間培養することに成功した。特に、ジョイントセグメントのあるVN1Gナノセグメント並びに2本鎖を有するVN2Gナノセグメントをハイトロゲル上に固定化した基板は、ヒトES細胞(H9)並びにヒトiPS細胞の培養に特に優れていた。特に、市販のコーテング素材より、ヒトES細胞の培養に適していることを明らかとした。さらに心筋細胞への分化も検討した。本研究の結果、細胞培養基板の物理特性(弾性率)並びに生物学的特性(特異的細胞接着オリゴペプチド)は、ヒトES細胞(H9)並びにヒトiPS細胞の培養に重要であることを明らかとした。本研究の成果は、Scientific Reports 7 (2017) 45146に掲載された。
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