研究課題/領域番号 |
15K06596
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
溝端 一秀 室蘭工業大学, 工学研究科, 准教授 (00271875)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 超音速機 / クランクトアロー翼 / 空力微係数 / ロール / ピッチ / ヨー / 風洞試験 / CFD |
研究実績の概要 |
本研究者は、マッハ2程度までの速度で飛行できる小型飛行実験機において、亜音速および超音速空力性能を両立できるクランクトアロー平面形状とダイヤモンド翼型の組み合わせを提案している。クランクトアロー翼まわりの流れは前縁剥離による大規模渦流れとなり、その全機空力特性には未解明要素が多い。そこで本研究では、姿勢変化レートによる空力微係数に焦点を絞り、動的風試、非定常CFD解析、および縮小機体による飛行試験によって、クランクトアロー主翼を有する超音速機形状の姿勢変化レートによる空力微係数を定量的に明らかにすることを目指している。その成果は6自由度飛行性能予測や自律的誘導制御則構築に資すると期待される。平成28年度には以下の事項を実施した。 1.風試模型にロール、ピッチ、およびヨーレートを与える機構を用いて、これら姿勢変化レートによる空力特性を風洞試験によって計測した。その際、室蘭工大設置の回流式低速風洞を整備し、ノイズ対策を徹底することによって、信頼性の高いデータが能率的に取得可能となった。 2.風洞試験と同等の条件でCFD解析を実施し、姿勢変化レートによる空力微係数を推算した。 3.繰り返し安全に飛行試験を実施することを狙って、降着装置や推進機器の艤装を念頭に縮小機体(翼幅80cm、全備質量3.5kg程度)の改良設計を進め、主要な機体構造を改良試作した。 4.風洞試験、CFD解析、および単純理論の結果を比較検討したところ、ロールレートによる空力微係数は概ね良好な一致を見、その値はロールレートによらず概ね一定であった。ピッチおよびヨーレートによる空力微係数については、一致の程度がまちまちであり、レートの大小によって値が変わることが分かった。主翼・尾翼等の空力干渉や、回転中心(重心)から遠い機首や尾翼での流れの剥離の可能性が推察され、そのメカニズムの解明が今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、実施項目毎に以下のように進捗のプラスマイナスがあるものの、総じておおむね順調に進展している。 1.前年度までに構築したローリング、ピッチング、およびヨーイングの駆動機構を用いて、ローリング、ピッチング、ヨーイングのすべてについて風洞試験を実施し、動的空力微係数を計測した。さらに、ローリング、ピッチング、ヨーイングのすべてについてCFD解析を実施し、動的空力微係数を推算した。これは当初計画通りである。 2.室蘭工大設置の回流式低速風洞を整備し、ノイズ対策を徹底することによって、信頼性の高いデータを能率的に取得できるようになった。これは当初計画には無かったが、ノイズの少ない良質の計測データを能率的に得る必要から追加実施したものである。 3.飛行試験用の縮小機体の設計・製作については、平成27年度に未決であった降着装置及び推進機器の搭載方法を検討し、機体の改良設計を進め、これに基づいて機体を改良試作した。当初計画より進捗が若干遅れているが、安全確実な飛行試験のために必須のプロセスであることから念入りに対処したものである。 4.風洞試験、CFD解析、および単純理論の結果を比較検討し、ロール、ピッチ、ヨーレートによる空力微係数の特性の概略を明らかにした。その成果を、国際学会2件および国内学会5件にて発表済みであり、さらに国際学会2件および国内学会1件にて発表予定(確定)である。これは当初計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの2年間の取り組みの過程で顕在化した課題を中心として、以下の事項に取り組む。 1.姿勢変化レート、特にピッチおよびヨーレートによる空力微係数について、主翼・尾翼等の空力干渉や、回転中心(重心)から遠い機首や尾翼での流れの剥離の可能性を、流れの可視化を伴う風洞試験によって検証する。 2.同じく、CFD解析によっても検証する。 3.縮小機体の製作・整備を進め、飛行試験を実施し、実飛行状態での空力微係数の測定を試みる。 4.以上の3通りの取り組みによって得られた空力特性データを総合的に評価して、ロール、ピッチ、およびヨーレートによる空力特性を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
229円という極めて少ない金額が残ったことから、残額合わせのために無理に使用するよりは、次年度交付額と合算して研究目的に合致した支出に充てることが適切と考えた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度交付額と合算して研究目的に合致した支出に充てることとする。
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