研究課題
本研究は,テザー挙動解析モデルの検証と改善を行うために,短期間かつ低コストで開発できるCubeSat により,テザー伸展に焦点を絞った軌道上実験を実施して展開時および展開後のケーブル挙動についてのデータ取得することを目的としている.平成28年度は,平成27年度に製作したCubeSatのフライトモデルに対し通信実験を,地上検証用モデルでテザー伸展制御・衛星姿勢制御則の検証を,またそれと並行して地上局の整備を実施し,2016年11月にJAXAに衛星を受け渡し,12月9日に打ち上げ,19日に「きぼう」からの放出を行い,本実験であるテザー伸展を行うため軌道上運用を実施した.本実験は平成29年度中に実施予定である.研究全体のとりまとめ及びテザー伸展技術(解析モデル検討を含む)を主として研究代表者とその研究室が実施し,衛星本体の通信試験を分担者(能見)及びその研究室が実施し,軌道上運用は両研究室で実施中である.研究実績は下記の通りである.・衛星開発:フライトモデルと同等の地上検証用リール機構について衛星に実装したテザー張力制御プログラムの作動を確かめ,また,磁気トルカについて,その衛星姿勢制御性能の評価を実施し,想定される状態から衛星を安定させることが可能なことを確かめた.衛星通信についてコマンド・データ送受信性能を確かめた.・地上局:昨年度製作した地上局について衛星との通信が可能な状態に調整を行った.・テザー挙動解析モデル:本研究グループで過去に開発した宇宙テザー挙動解析モデルおよび宇宙エレベーターケーブル伸展モデルをもとに,今回の衛星によるテザー伸展に適合するモデルを構築し,それを使って本衛星のテザー伸展時の挙動を解析した.さらに,次期衛星についても伸展挙動を検討した.
2: おおむね順調に進展している
平成28 年度の当初の予定は,衛星の軌道上運用およびテザー伸展実験の実施・データ取得であったが,衛星打ち上げ自体が当初の予定(平成28年度中)より9か月遅れたので,宇宙実験実施には至っていない.しかしながら,地上局調整も含めて軌道上運用を実施しており,次年度実験実施可能な状態である.開発衛星のテザー挙動解析モデルについては,すでに完成し本実験の条件での解析を実施しており,予定通りといえる.以上から,本研究課題はおおむね予定通り進んでいると判断できる.
平成28年度で衛星を軌道運用状態まで持ってきており,テザー挙動解析モデルも完成しているので,最終年度である平成29年度は,当初の目的を達成するために下記の方針で研究を進める.宇宙実験を実施し,そのデータとテザー挙動解析モデル計算結果との比較によりテザー挙動解析モデルの改善に反映する.加えて,本成果を日本学術会議のマスタープラン2014 に採用された超小型衛星ミッション中の宇宙エレベーターPJ 提案に基づき,次期軌道エレベーター技術宇宙実験(軌道上で展開したテザー上でのクライマ昇降実験)の設計に反映する.
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 5件)
Acta Astronaitica
巻: TBD ページ: TBD
https://doi.org/10.1016/j.actaastro.2017.01.032
Acta Astronautica
https://doi.org/10.1016/j.actaastro.2016.12.022
Journal of British Interplanetary Society
巻: 69 ページ: 227-239