研究課題/領域番号 |
15K06607
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
末益 博志 上智大学, 理工学部, 教授 (20134661)
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研究分担者 |
長嶋 利夫 上智大学, 理工学部, 教授 (10338436)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | CFRP積層板 / 圧縮破壊 / 応力集中 / 体積効果 / せん断不安定 / 破壊進展 |
研究実績の概要 |
応力集中部からの破壊は最大応力値とその広がりの影響を受ける(寸法効果).また、応力が一様でない箇所の破壊であるため損傷発生だけでなく進展条件をも考慮しなければならないので、現象の把握と強度予測は非常に困難な問題である。 初年度は基礎的な実験結果と数値シミュレーションを実施し、これらの結果に基づいて研究の方針を確立した。実験では試験片および試験治具を設計製作し、実験を実施した。実験の可視化に注力し、破壊の開始から進展の状況に関して、応力集中の影響を定量的に示すことができた。また市販の有限要素解析ソフト(Abaqus)を用いて圧縮試験片をモデル化し、応力集中係数と試験片の寸法の関係を明確にした。また固有値解析を実施し、最大応力を示す要素のみでせん断弾性不安定現象を示すことを見いだした。この不安定現象が圧縮破壊の発生に少なくない影響を与えると考えられることが推測できる。しかしこの不安定荷重は実試験片の強度の2倍以上になるので、実問題を評価するには材料特性劣化モデルを構築することが必要であることを示している。 第2年度には、試験の精度を上げるために形状の変更を行い、試験データの蓄積を行うと同時に破壊プロセスの物理的な理解に努めた。有限要素解析ソフト(Abaqus)に組み込まれている損傷解析の定式化に従った形で数値解析を実施した。本モデルである程度、現象論的に破壊発生と損傷進展の推定できることを示すことができた。また実験では航空機用に開発された高い層間靭性を持つ試験材料板を準備して実験データを蓄積することを試みたが、本試験片では予想外の破壊が生じ圧縮強度を得ることができなかった。本破壊のメカニズムにつき調査中であり、今後の研究に結び付けたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの研究に加えて、高い層間靭性を有する試験片を提供してもらい実験を始めた。しかし、これまでの試験片では生じなかった別の破壊モードで破壊するためにこの材料の圧縮破壊特性の把握ができなかった。このため初期に予定した樹脂の靭性の影響を明らかにすることができなかった。 ただし、他の破壊モードで破壊が発生するメカニズムを明らかにするという課題を克服できれば、複合材料の破壊問題に関する一つの提言ができると考え、鋭意研究中である。
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今後の研究の推進方策 |
一方向材の強度実験の予想外の困難さを経験したため若干のデータの蓄積に手間取っているが、今後は擬似等方性積層板の実験を精力的に進めてデータの取得と蓄積・整理を行い、樹脂の影響に関して考察をおこなう。 数値シミュレーションに関して昨年度の経験を生かして、材料のたて割れの影響を考慮できる定式化に進みたい。この定式化によって、擬似等方性積層板の実験で観察される損傷の発生・発生直後の損傷不安定進展とさらに損傷進展の最後に表れる損傷の安定進展を定性的・定量的に明らかにしたい。これらを理論式に表現することを試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は予定した新材料の強度実験で予定外の破壊を生じたために、実験を中断せざるを得なかった。この実験を実施するための試験法の改善に関していろいろ試したが本質的な解決法が見いだせなかった。このことで、新材料を用いた材料試験にかかわる実験の経費の使用を中断し助成金の予算を次年度に持ち越した。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度中断した試験を含め、今年度予定している実験を年度初期に集中して実施する。このことで昨年度予定した予算を今年度の予算に併せて使用したい。このとき画像処理技術を用いて実験結果の整理を行うためのプログラムを導入したいと考えている。実験結果を理解するためにコンピュータシミュレーションを重点的に実施する予定であり、このために予算を使用したい。
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