研究課題/領域番号 |
15K06608
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
野村 浩司 日本大学, 生産工学部, 教授 (30246847)
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研究分担者 |
岡井 敬一 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 主任研究開発員 (00358516)
田頭 剛 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 主任研究開発員 (00344250)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 航空機用発電機 / 燃料電池 / 燃焼器 / GT/SOFCハイブリッド / 保炎 |
研究実績の概要 |
航空機複合発電機において燃料電池は,空気供給源および燃料電池の過剰水素処理を介してガスタービンと結びついており,燃焼器と燃料電池を組み合わせた反応器システム(リアクタ)としての評価が重要である.以下,平成28年度の計画に沿って研究実績を記述する. 1.固体酸化物形燃料電池(SOFC)小型単一セルによる高温発電基礎特性試験の実施:作動温度800 ℃,作動圧力0.10 MPaの条件で,平板SOFCの負荷変動発電試験を行った.定格点(0.8 V,Load factor: 45%)と最大出力の (0.4 V, Load factor: 100%)の間のサイクリックボルタンメトリ試験を各実験条件について1000サイクル行った.負荷変動速度を最大4000mV/sとしても破損・劣化はみられず,速い負荷変動速度の場合には各サイクルのピーク出力の履歴にも変化は見られなかった.負荷変動速度が遅い場合には,実験が長時間に亘るため,SOFCの温度上昇(雰囲気温度は一定に保たれている)が原因と考えられる出力の増大が起こった. 2.航空用発電システム評価ツールの作成:小型単一セルの発電試験データを基に,シミュレーションの燃料電池モジュールの設定を行った. 3.燃料電池・燃焼器モジュール(リアクタ)の製作と基礎実験の実施:模擬複合発電機用リアクタである燃料電池モジュール(円筒SOFCを1本装着)を製作した.これを用いて,SOFCで使用されなかった水素(過剰水素)を燃やす実験を大気圧で行った.リアクタを小型化するために,SOFCそのものを過剰水素のインジェクタとして用いることを計画し,実験を行った.水素火炎がSOFCの過剰水素出口に付着した場合,セラミックスであるSOFCが破損したので,過剰水素噴出孔から火炎が離れて保炎される浮き上がり火炎の実現が可能な燃料流速,空気流速,およびインジェクタ形状を調べた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.固体酸化物形燃料電池小型単一セルによる高温高圧発電基礎特性試験の実施:SOFCの負荷変動に対する耐性および追従性が航空推進機用発電機として使用できるレベルであることがわかった.負荷変動に対する追従性が良かったことにより,電動推進機電源システムとして大きな二次バッテリーを使用する必要がなさそうであることがわかった.今後,航空機飛行環境下でのシステム特性評価シミュレーションで裏付けを行いたい.また,ACインピーダンス試験の結果と合わせて現在SOFCの動的性能試験結果の評価を行っている.H28年度は大気圧での試験のみ行ったので,高圧環境発電試験はH29年度に行う. 2.航空用複合発電システム評価ツールの作成:計画通り進んだ.燃料電池3次元数値解析評価がまだ行えていないので,H29年度はこれに着手する. 3.燃料電池・燃焼器モジュール(リアクタ)を用いた燃焼実験: 燃料電池モジュールを製作し,大気圧における燃焼試験が行えた.しかしながら,今年度の実験条件においては,浮き上がり火炎による保炎が実現できる条件がなかった.これは,空気温度および水素温度がともに高いことに起因する.H29年度は,実験装置に改良を加え,さらに高い燃料流速および空気流速での実験を行う.高温場における水素拡散火炎の保炎の基礎データは既存のものがないので,基礎研究としても興味深い.室温における水素拡散火炎の保炎に関する既存のデータと比較を行いながら,系統的にデータを収集し,普遍性のあるデータとしてまとめる計画である.以上より,計画からは若干の遅れが生じている.
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今後の研究の推進方策 |
1.固体酸化物形燃料電池小型単一セルによる高温高圧発電基礎特性試験の実施について:高圧環境発電試験を行う. 2.航空用複合発電システム評価ツールの作成について:燃料電池3次元数値解析評価に着手する.また,航空用複合発電システム評価ツールの燃料電池モジュールを動的なシミュレーションにも対応できるように改良を加える. 3.燃料電池・燃焼器モジュール(リアクタ)を用いた燃焼・発電実験について:高温場における水素拡散火炎の保炎の基礎データを系統的に収集し,普遍性のあるデータとしてまとめる.また,同様な実験を燃料電池モジュールをスタック化して行う.その中の一本のSOFCのOCV(Open Circuit Voltage)を計測し,SOFCの置かれている環境が発電に適しているかどうかの判断を行う.その後,燃焼風洞で発電試験を行う計画である。実験結果と3次元数値解析(熱流体・燃料電池発電解析)結果を比較・検討し,解析の予測精度を高める。また,システム解析プログラムの予測高精度化を並行して進め,現行の航空機発電システムに比較してどの程度の優位性があるかを最終的に示せるようにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
JAXA風洞施設に実験装置を装着するためのアダプタ製作費および運用費(人件費)が計画より高額になることがわかったため,H29年度予算と合わせてこれらの費用に充てるため.
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次年度使用額の使用計画 |
JAXA風洞施設に実験装置を装着するためのアダプタ製作費および運用費として8月および11月に使用する.
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