研究課題/領域番号 |
15K06614
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工 |
研究代表者 |
田中 宏明 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, その他部局等, 准教授 (90532002)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 航空宇宙工学 / 展開構造物 / 展開再現性 / 高精度構造 / 宇宙用アンテナ / スマート構造 / 振動付与 |
研究実績の概要 |
高精度展開アンテナ構造における振動付与による展開再現性の向上を目指し,平成27年度は試験モデルを構築し,振動付与による形状収束の実証試験を行うとともに,その現象を表現できる数学モデルについて検討を行った.また,これらを用いて展開非再現性の要因を分析した. 試験モデルはリブ‐ケーブル型展開アンテナ構造の一部を模擬したもので,リブを模したはりとヒンジ部,ケーブルに相当するばねから構成される.ヒンジ部は内部の摩擦力を変化できる機構としている.この試験モデルを用いて,ヒンジ部の摩擦を変化させた際のはり位置の非再現性を評価し,摩擦が大きいほど展開再現性が悪化することを確認した.本研究の前に行った試験結果と合わせて,摺動部の摩擦およびケーブルの非線形性が展開再現性を悪化させる要因であることを明らかにした. 振動付与による形状収束の実証試験では,振動付与により鏡面を模擬した構造が一定の形に近づくことを実証するとともに,加えた振動が系の固有振動数に近いほど効果が大きいことを明らかにした.固有振動数に関しては,評価を行った1~5次のモードでは高次モードほど再現性向上効果が高いことを確認した. 数学モデルの構築では,まず展開再現性の要因と考えられるヒンジ部に関して,要素試験を行い,その特性を区分線系モデルにてモデル化した.次に,それを組み込んだ試験モデルに相当する数値モデルを作成し,展開非再現性と振動付与による展開再現性の向上についての評価を行った.試験結果との比較を通して,数値モデルにより現象を定性的に表現できるモデルであることを確認した.ただし,定量的には試験結果と異なる点があることから,今後試験モデルの改良を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究では,展開非再現性を表現できる試験モデルの構築が重要な課題となっていたが,過去の研究で利用していた試験モデルの改修が順調に進むとともに,気温などの環境条件と計測結果の関係式を構築するなど,計測系の高度化も順調にすすみ,適切な評価が可能な試験系を構築できた.そのため,その試験モデルを用いた展開非再現性の評価や,振動付与による展開再現性の向上評価など,試験的な検討については計画通りに進めることができた.数値モデルの構築においては,定性的な評価にとどまるものの,現象を評価できるモデルとなっており,今後の改良は必要だが,おおむね順調に研究が進んでいると考えられる. ただし,本研究費の採択が平成27年10月であったため,成果の公開については十分とは言えないため,平成28年度は積極的に成果を公開する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は,平成27年度の検討に引き続き,実験・数値解析の両面で研究を進め,現象を評価するとともに,平成29年度に行う予定の設計方の構築に必要な基礎モデルを確立する. まず数値解析において,平成27年度の数学モデルを改修し,得られた試験結果を適切に表現できる数学モデルの確立を目指す.また,そのためのヒンジ部の要素試験を追加実施するとともに,圧電アクチュエータの添付位置についても検討を行う.また本手法を実衛星へ適用することを想定し,適切な数値モデル化に必要な要素試験の種類など,モデル化自体の方法論についても検討を行う. 実験面では,まずは付与する振動を単なる1周波数での振動から変化させ,振動パターンによる形状再現性の変化を確認する他,アクチュエータ位置を変化させ,より効率的な振動付与方法を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究費の採択が平成27年10月であったため,申請時に予定していた講演会への申し込みができず,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に得られた成果のうち,一部は学術論文誌にて掲載済みであり,その掲載費に使用するほか,平成27年度に公開できなかった成果を公開するために,次年度使用額を利用する予定である.
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