環境対応型潤滑油のトライボロジー特性を、従来油と比較・調査した。まず、低速・高荷重下で摩擦力の挙動を調べ、条件によってはスティックスリップ現象、すなわち、摩擦の不安定挙動が環境対応型潤滑油のエステル系、非エステル系油に現れることが分かった。 次に、人工海水を混入した潤滑油を用いて、滑り速度を変化させて摩擦係数を計測した。垂直荷重と潤滑油温度は一定とした。2週間ごとに摩擦試験を行い、8週間まで実施した。飽和エステル系油を不飽和エステル系油を比べると、安定性においては飽和エステル系油の方が優れていたが、従来油と比較をすると、不安定であった。また、時間の影響については、明確な傾向が得られず、2週間後に上昇することもあれば、下降することもあった。 この理由として、加水分解による脂肪酸の生成による摩擦力の低減作用、水分混入による摩擦力の増加作用の2つが挙げられ、これらの影響で摩擦力が不安定になるものと考えられた。従来油の場合には加水分解による脂肪酸の生成が生じないため、安定した摩擦挙動を取るものと考えられた。 次に、従来油、エステル系油、非エステル系油の低速・高荷重下における摩擦挙動を3ピンオンディスク摩擦摩耗試験装置を用いて計測・観察した。実験条件は、面圧12.5MPa、25MPa、37.5MPa、速度25.9㎜/s一定、油温60℃とした。その結果、従来油は安定した摩擦挙動を示したが、エステル系油、非エステル系油はスティックスリップ現象が観察された。
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