研究課題/領域番号 |
15K06617
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
水野 直樹 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30135404)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 最適制御 / 実時間制御 / 船舶制御 / 遺伝的アルゴリズム / スライディングモード制御 / 適応制御 |
研究実績の概要 |
航行中の船舶には,風や波,潮流などが絶えず影響を及ぼし,さらに,積荷や燃料の変化,経年劣化などもその操縦性に影響する.的確な操船にはこれらの特性の考慮が必要であり,船舶の特性を熟知した船員により航行がなされている.しかし,船員志願者の不足,効率的な運用,省力化の観点から,船舶の操船を支援するシステムの開発が望まれている. 例えば,船舶を所定の位置に誘導する着桟操船は困難な操船の一つである.これは,減速に伴い船体の操縦性能が大きく変化し,かつ外乱の影響が増大するためで,操船にはより高度な操船技術が要求される.着桟操船の自動化に関して,操船所要時間を評価基準とした最短時間制御解をもとに自動操船を目指す研究が知られている.この手法は合理的な制御解が得られる反面,計算手法が複雑である点や,制御解の導出に数値計算上の調整や長い計算時間が必要となることが多く,実海域で直ちに制御解を求め,運用することは困難である.加えて,実用化に際しては,航行中に変化する外乱や,船舶の数学モデルと実船舶とのモデル化誤差を考慮し,指令値を補正する必要がある. また,船舶が巡航状態であっても必要に応じて進路変更を行うことは日常であり,その際にも載貨状態や海象に応じた最適な制御が望まれる.このような最適制御問題では対象特性や環境が変化することを前提とした適応機能の導入が望まれている. 本年度の研究では,最適な着桟制御を実現する方法として,実際の船舶の運動と着桟目標との偏差に基づく評価関数を遺伝アルゴリズムを用いて最小化することで,最適制御解を求めることを試みた.加えて,巡航状態を最適化する手法として,最適制御手法とスライディングモード制御手法,さらに適応制御手法を融合した実用的な制御系を提案した.最後に,提案した着桟制御手法および巡航状態の最適制御手法の有効性を確認するために,実海域で実船実験を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年開発した着桟制御アルゴリズムの実用上の問題点を解決する新しいアルゴリズムを開発した点と,異なる状況(巡航状態)の最適制御手法を同時に開発し,実船実験を行うとともに,さらに国際学会を含む複数の学会でその成果を発表することができた. 一方,実船実験を当初予定した回数実施できなかったため,新しく開発した手法の評価が十分に出来ていないため.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,着桟制御問題に関しては問題を遺伝的アルゴリズムで解く方法を検討するとともに,巡航状態の制御に関してはスライディングモード制御と適応制御を組み合わせた手法を開発して実船実験を実施してその有効性を検討した.
その結果,提案手法が巡航状態の最適制御手法としては実用性が高いことが確認できたが,着桟制御手法に関しては,昨年までの手法より計算時間の短縮ができたものの実用化には入力の生成法や評価関数に関して更なる改善が必要であることも明らかとなった.
そこで,今後は着桟制御問題を実時間で解く手法として,提案した遺伝的アルゴリズムによる手法をさらに改善すとともに,計算の並列化に関してし,より実用的なアルゴリズムを開発することに注力する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,数値計算用並列計算機の購入を計画していたが,購入を予定していたハードウェアと類似の評価用計算機で計算速度を評価したところ期待した性能が得られなかったため,導入を保留した. そのため,機器購入に予定していた予算を有効活用するため,次年度使用とした.
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次年度使用額の使用計画 |
アルゴリズムの改良も検討し,当初検討していた機器で計算時間の短縮が見込めるようであれば,購入を行う予定である. また,本年度は実船実験を当初予定の回数実施できなかったことから,追加実験の実施に必要な予算としても予定している.
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