研究課題/領域番号 |
15K06622
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
桃木 勉 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00371782)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | CFD / CIP法 / 理想化陽解法 / 流体構造連成問題 |
研究実績の概要 |
流体構造連成問題の数値解析は最適な構造設計を行うために産業界でニーズが高まっており、理想化陽解法FEMの高速・省メモリ性に着目し、その計算手法の考え方を流体構造連成解析に取り入れた新しい数値解析手法の開発を行う。 流体領域の計算には高精度な移流計算が可能なCIP-CUP法を適用した計算プログラムの構築を行った。本研究では計算時間の大半を占める圧力のポアソン方程式の解法に陰解法ではなく動的陽解法の一種である理想化陽解法の考え方を導入した。これは収束性を高めるために調整を行った慣性項および減衰項を付加した減衰振動を行う方程式を作成し、付加した慣性項と減衰項の影響が無視できる程度に小さくなり,かつ,静的平衡状態を満たすまで仮想時間上を減衰振動させたうえで物理量の更新を行うものである。現在、ポアソン方程式を陰解法で計算する通常のCIP-CUP法との比較計算を行っているが、計算の高速化などについて十分な成果が得られていない。そのため理想化された慣性項および減衰項の作成方法や収束判定方法などについて再検討を行っているところである。 構造領域の計算には理想化陽解法FEMをベースにした計算プログラムの構築を行った。構築した計算プログラムの検証のためにL字型構造部材の端部に力をかけた簡単な静的解析モデルを対象に計算を行い、市販のFEMソルバーであるMSC.Nastranを用いた計算結果との比較を行った。その結果、両者の計算結果は定量的に一致し、構築した構造領域の計算プログラムは高い精度での構造解析が可能であることを確認した。 また、検証のための模型実験として、スロッシングを起こすタンク内に一端固定で設置された弾性板の挙動および弾性板に作用する応力の計測を試みた。しかしながら、実験設備の関係で正面からのビデオ撮影が困難であったため、問題の装置を使う必要がない実験で検証する計画を立てている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度の目標は、まず流体領域と構造領域の解析プログラムを構築し、個別の精度検証および必要な修正を行うことで完成度を高める。また、これらのプログラムを用いて弱連成型の流体構造連成解析プログラムの開発および検証実験を開始することである。 まず、流体領域の計算法について、移流計算にはCIP法を、圧力のポアソン方程式の解法には理想化陽解法を用いた計算プログラムを構築した。構築した流体解析プログラムについてはテストケースとしてダム崩壊問題の計算を行っているが、解くべきポアソン方程式が同じであるにもかかわらず陰解法を用いたCIP-CUP法を用いた計算結果と完全には一致しない。この問題に対して計算手法の違いに起因するものなのか、理想化陽解法の減衰計算が不十分なのか検証を行っているところである。また、圧力を求める計算に時間がかかっており、陰解法を用いたCIP-CUP法と比べて想定していたほどの計算時間短縮にはなっていない。この問題に対しては理想化陽解法を開発した柴原らの報告を参考に、最適な減衰項の求め方を検討しているところである。 一方、構造領域の計算法については理想化陽解法FEMをベースとしたプログラムを構築した。構築した構造解析プログラムについては簡単なテストモデルを用いた試計算を行い、市販のFEMソルバーであるMSC.Nastranを用いた計算結果と定量的に同等の計算結果が得られた。このことから高い精度での構造解析が可能であることを確認した。 これらのことから構造解析プログラムは完成しているものの流体解析プログラムの完成度は満足できるところまで達しておらず、流体構造連成解析プログラムの開発に若干の遅れが生じている。 検証実験の準備については予備的な検討を実施していることや、水槽の作り直しを除けば機材の準備は概ね終わっており、概ね予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
流体領域の計算プログラム開発に若干の遅れが生じているため、これに重点的に取り組む。まず、理想化陽解法の計算における仮想時間上の減衰計算について、収束までに時間がかかっている問題に対しては、理想化された減衰項の作成にあたって、柴原らの論文を参考に臨界減衰よりも若干小さめの値となるようにし、幾つかの流体計算を通して最適な求め方を探索する。ポアソン方程式の解法に陰解法を用いたときと理想化陽解法を用いた時の計算結果の誤差については、解法の問題なのか、減衰計算における収束が不十分なのかを検証するために、理想化陽解法の減衰時間や収束条件について変化させ、結果の変化を確認する。また、計算プログラムや用いている計算式についても再確認を行う。仮に解法の問題ということになれば、既出の実験結果などをベンチマークとして、精度検証を実施する。 これと並行して、本研究の目的の一つである流体構造連成問題を計算するために、弱連成型の流体構造連成解析プログラムを構築する。さらに計算高速化のためにGPGPU等についても導入のための検討を始める。 検証のための模型実験については準備が整い次第、模型実験を実施して、開発した計算プログラムとの比較・検証を行う。 これらの成果を通して、提案する計算手法が流体からの外力を時系列で捉え、同時に構造物に作用する応力まで推算できる構造設計へ応用可能な計算ツールとしての可能性を示すことを本年度の目的とする。
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