富山新港内において、港内全域でCTDでの水質調査を行った。観測結果から、海水と河川水から構成される港内の水塊構造では、河川に近い海域の上層では低塩分で低密度、下層では高塩分で高密度の異なった水質の水塊が存在していることが確認できた。富山湾と港内の観測結果の比較でも、港内の下層における水塊の水温・塩分・密度の値が富山湾の中層とほぼ同一であることから、港内の下層は富山湾の海水と同じ水塊であることが推測できる。この観測結果により、前年度までの観測により原因究明した、夏場の特異な流れも説明できる。 2018年には港内中央に大型LNG船の入出港が予定されるLNGバース周辺海域での観測では、CTDとADCPを用いて観測を行った。ADCP観測では、上層の低塩分水層と、下層の高塩分水層で密度も異なるため、流向流速が異なることが確認された。またCTD観測により、水深約2mまでは河川水影響が強く、水深約2~4mでは河川水と海水が複合し、水深約4m以深では海水影響を受けていることが確認できた。ここで、水質の異なる水塊が存在することによりLNGバース周辺海域では特異な流れが発生していることが分かった。 山元町の観測においては、ホッキ貝の生態状況把握のための海洋環境調査を実施した。ここのホッキ貝は、その類を見ない味の良さから人気を博している。地元古老の言い伝えでは、山元海岸の海底に流れる阿武隈川からの澪(泥土流)によって育まれるものということであった。これまでの観測結果から、坂元川の流れは、阿武隈川や海流の影響により河口部で澱みを発生し、ここでは、潮汐の影響で阿武隈川と坂元川から供給される土砂と栄養塩がブレンドされて存在するといえる。この海底部は、濁度と蛍光量が非常に高いため、細かい砂や栄養塩が豊富に蓄積していることが推測され、ホッキ貝の稚貝にとって安定した居住空間になっていることが確認された。
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