研究課題/領域番号 |
15K06633
|
研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工 |
研究代表者 |
森 和義 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, 応用科学群, 教授 (70259894)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 海洋科学 / 海洋工学 / 海洋探査 / 音響レンズ / 海中周囲雑音 / 物体映像化 / 沿岸域生物雑音 / 周波数依存性エコー |
研究実績の概要 |
海中周囲雑音を音源として積極的に利用して海中物体を画像化する手法を周囲雑音イメージングと呼ぶ.筆者は,この手法を実現するために世界で初めて音響レンズを導入した実験装置を開発し,実海域試験の結果,テッポウエビに代表される沿岸域生物雑音を利用して無音物体の探知に成功した.本研究では,広周波数帯域の海中雑音に対するターゲットからのエコーに周波数依存がある場合に,その周波数成分を含む情報を探知画像上で効果的に表現する方法を開発することを目的とする. 今年度は,広帯域入射波に対して周波数依存するエコーを返す模擬ターゲットを設計・製作する.ここでは,模擬ターゲットの形状を球形とし,共鳴構造を利用して共鳴周波数のみを返すターゲットを設計・製作する.所望の共鳴周波数になるように体積や共鳴構造を決定した後,製作を行った(業者特注).さらに,水槽試験を行って,設計通りの共鳴周波数のエコーを生成するか確認した. 以上より,周波数依存性を有するエコーを生成する模擬ターゲットの設計・製作が完了し,次年度に向けた準備が整った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次年度の実海域試験に向けて,周波数依存エコーを返す模擬ターゲットの設計・製作を行った.現有する周囲雑音イメージング装置の対応周波数帯域は40~200 kHzであるが,ターゲットを解像するために方位解像度2度以下とするには60 kHz以上の周波数を用いる必要がある.ここでは,60~200 kHz帯域を低・中・広周波数帯域に3分割し,低周波数帯域に対して80 kHz,および,中周波数帯域に対して120 kHzの周波数依存エコーを返す2種類の模擬ターゲットを設計・製作した.また,その形状は広い空間的範囲に存在する雑音源に対応するため,指向性の依存性が少なくなるように球形とした.水槽試験の結果,製作された模擬ターゲットは所望の性能を有することを確認した.
|
今後の研究の推進方策 |
次年度には,まず2016年11月に沼津市内浦湾にて実海域試験を計画している.ここで周囲雑音イメージング装置および製作した模擬ターゲットは内浦湾に係留された実験バージより吊り下げられる.はじめに,予め模擬ターゲットに取り付けた位置合わせ用ピンガより音波を放射して周囲雑音イメージング装置の視野角内に模擬ターゲットが配置されるように位置合わせを行う.そして,ピンガ出力を止めて,海中周囲雑音のみを用いてターゲットからの周波数依存エコーをイメージング装置で計測する. さらに,試験により得られた実験データに対して,画像化を行うデータ解析を進める.イメージング装置には像面に127個の受波素子が配置されており,水平方位-7, -6, … , +7 度および鉛直方位-4, -3, …, + 4度に向けた受信ビームで計測された音波が各受波素子に結像することになる.各受波素子の受信信号のパワースペクトルを求め,対象周波数帯域を低・中・高周波数の各帯域に分割して,それぞれの帯域内の受波スペクトルレベルの平均強度を求める.低周波数の強度を赤(R),中周波数の強度を緑(G),高周波数の強度を青(B)として色を割り当て,RGB加法混合して画素とする.各受波素子が対応する方位に画素を配置して,画像化を行う.これより,エコーの周波数依存性により模擬ターゲットを色分けして類別できるか検証する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
改めて共鳴構造を有する球形の周波数依存ターゲットを設計した後,業者依頼して製作したところ,申請時の見積額より安価に実現できた.また,模擬ターゲットを計測バージに取り付ける治具の製作を当初予定していたが,既存品が使えることとなった.そのため,打ち合わせのための旅費および製作費が残額となった.これらを合わせて次年度使用額が生じた.
|
次年度使用額の使用計画 |
2016年11月中に,実海域試験を実施する計画を立てている.沼津市内浦湾に係留された計測バージに周囲雑音イメージング装置を固定し,さらに製作した周波数依存ターゲットを吊り下げる.そして,海中周囲雑音を用いて,ターゲットから周波数依存エコーを受信する実験を行う.この実験において,計測バージの用船,および,沼津市への旅費として次年度使用額を用いることになる.
|