海中周囲雑音を音源として積極的に利用して海中物体を画像化する手法を周囲雑音イメージングと呼ぶ.申請者は,この手法を実現するために世界で初めて音響レンズを導入した実験装置を開発し,実海域試験の結果,テッポウエビに代表される沿岸域生物雑音を利用して無音物体の探知に成功した.本研究では,広周波数帯域の海中周囲雑音に対するターゲットからのエコーに周波数依存がある場合に,その周波数成分を含む情報を探知画像に効果的に表現する方法を開発することを目的とする.一昨年度に設計・製作した周波数依存するエコーを返す2つの模擬ターゲットを用いて,昨年度に実海域における海中周囲雑音下でのエコー計測を行った.計測バージの周辺の広帯域雑音が模擬ターゲットに照射されたことにより,周波数依存エコーとしてイメージング装置に受信された. 今年度は,得られた実験データに対して,画像化を行うデータ解析を進めた.これまでは,一定の周波数帯域において受信帯域レベルを求めて画素値とし,各受波素子が対応する方位に画素を配置して,画像化を行った(強度マッピング).本研究では,各受信パワースペクトルを求め,対象周波数帯域を低・中・高周波数の各帯域に分割して,各帯域内の受波スペクトルレベルの平均強度を求めた.低周波数に赤(R),中周波数に緑(G),高周波数に青(B)を割り当て,RGB加法混合して画素とした(RGBマッピング).つまり,形成された画像には,エコーの強度だけで無く,周波数成分も含めた情報が含まれることになる.実験データを用いて画像化を行ったところ,従来の強度マッピングでは2つの模擬ターゲットが視野内に存在していることだけしかわからないが,RGBマッピングでは周波数成分の違いが色の違いとして効果的に画像中に表現でき,2つの模擬ターゲットを効果的に類別できた.
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