研究課題/領域番号 |
15K06635
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
大塚 尚寛 岩手大学, 工学部, 教授 (40133904)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 骨材 / GIS / 砕石 / 砂利 / 骨材需給量 / 人口動態 / 多変量解析 / 将来予測 |
研究実績の概要 |
1.骨材の生産供給側と消費需要側の両面から、現状および将来的な需給量を推定できるシステムの開発を行った。骨材の生産側からみた現状および将来的な供給量を推定する方法として、先に開発した「GISを利用した骨材資源ポテンシャル評価システム」の研究成果を発展させ、既存の採石場の位置、用途別生産量、製品出荷先等の情報を、採石場情報としてデータベース化した。また、素因となる情報群と新たに生成された情報群を整備していく枠組みとして、データベースを地質、地形、開発規制、環境、経済の5つのサブシステムとして構築した。 2.骨材需給量の過去から現在に至る状況を精査し、骨材需給量と人口動態、経済推移、インフラ整備等との関係についての相関性を考察して、因子の抽出を試みた。これらの因子を用いて、骨材需給量の将来予測について検討した。(1)全国47都道府県の砕石生産・出荷・消費量、砂利生産出荷量、道路用砕石生産・出荷量、コンクリート用砕石生産・出荷量の経年データを、都道府県ごとに関係機関から収集した。また、社会・経済情報として、人口、面積、人口密度、GDP、1人当たりのGDP、道路延長、道路面積等の数値情報を、都道府県ごとに関係機関から収集した。(2)収集した数値データを基に、全国、地方ごとの年推移グラフを作成し、各地域や各年における特徴について調べた。(3)骨材需給量と社会、経済情報のデータを特定の年ごとに比較し、大都市圏と地方圏に分けて,骨材需給量の関係要因を検討した。(4)骨材需給量と社会・経済的指標との相関関係を調べ、相関係数が高い指標を説明変数、骨材需給量を目的変数として多変量解析を行い、重回帰式を導き出して、将来推移を推定することが可能になった。この中で、骨材の大消費地である大都市圏と、骨材の”地産地消”が成り立っている地方圏とに分けて解析を行う必要があることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨材の生産側からみた現状および将来的な供給量を推定する方法として、先に開発した「GISを利用した骨材資源ポテンシャル評価システム」の研究成果を発展させることで、研究を進めた。素因となる情報群と新たに生成された情報群を整備していく枠組みとして、データベースを地質、地形、開発規制、環境、経済の5つのサブシステムとして構築することができた。これらの5つのサブシステムをGIS上で有機的に結合させていくことで、将来的な開発可能地域や可採資源量が推定できるシステムとなった。ただし、既存インフラ、人口動態、地域面積等を、GISを用いてデータベース化し、骨材需要の将来予測をマッピングできる機能も付加するまでには至らなかった。 骨材需給量と社会・経済的指標の推移を調べ、各地域、各年ごとの特徴を見い出した。また,骨材需給の現状把握を行った。特に、骨材の大消費地である大都市圏と骨材の地産地消が成り立っている地方圏に分けて、骨材需給量の関係要因を検討した。その結果、砂利生産・出荷量と相関が高い項目は、大都市圏・地方圏ともに、人口、世帯数、GDPの3つの項目であることが分かった。大都市圏と地方圏で共通するこれら3項目を説明変数とし、全国砂利生産・出荷量を目的変数として、多変量解析を行った。その結果、次の重回帰式が得られた。 Y=4.234(X1)-0.00963(X2) ここで,Y:砂利生産・出荷量(千ton),X1:人口(千人),X2:世帯数 この式を予測式として、2030年までの砂利生産・出荷量の将来予測を行った結果、今後、人口減少社会の到来によりX1の人口と、X2の世帯数が減少することにより、砂利生産・出荷量は減少すると予測された。 砂利に関する需給量の将来予測式を導出することができたが、骨材の大半を占める砕石については、引き続き検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
1.骨材の広域的な最適輸送をシミュレーションできるシステムの開発 (1)骨材の生産供給体制を全体最適化する手法として、サプライチェーンの概念を導入する。この概念を用いれば、ITを活用して生産や調達などの体制を柔軟に対応することで、余剰在庫の削減など適正な生産体制を整えられるため、需要の見通しに変化が大きい骨材の生産・流通に導入することが適すると考える。(2)骨材の広域的な最適輸送をシミュレーションする方法としては、先に開発した「砕石運搬過程におけるCO2排出量削減のための最適輸送シミュレーションシステム」の研究成果を改良・発展させる。(3)骨材の生産地から消費地への輸送については、GISの拡張機能であるNet Work解析機能を利用する。 2.骨材の広域サプライチェーン最適化を可能にするGISを利用したクラウド管理システムの構築 (1)骨材需給関係の全体最適化のためには、インターネットを介したクラウドコンピューティングによる情報の共有化が不可欠である。そこで、クラウド管理システムのメインサーバーにGISクラウドを利用する。(2)骨材の需要量と供給量とを広域的に把握し、骨材工場の生産量・出荷量を調整できる機能を有するシステムとする。(3)クラウド管理システムのエンドユーザである骨材生産企業のPCや、骨材の輸送に直接携わるダンプトラックドライバーのスマートフォン等のモバイル端末からの直接アクセスを可能とし、各モバイル端末からの位置情報や骨材輸送量・移動距離等をビックデータとして、骨材の広域的な最適輸送に反映させ、サプライチェーンの全体最適化を可能にするシステムとする。 3年間の研究成果を統合して、需給関係を全体最適化するための骨材サプライチェーンの確立と、それを一元的に管理することを可能にするクラウド管理システムを完成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
骨材の生産供給側と消費需要側の両面から、現状および将来的な需給量を推定できるシステムの開発に当たり、骨材の広域的な最適輸送をシミュレーションするとともに、大量のデータを高速に処理でき、また、GISクラウドメインサーバーとしても高負荷に対応できるデュアルCPUハイエンドワークステーションを購入予定であったが、Microsoft社のWindows用OSがバージョンアップしたため、ワークステーションと新しいOSの作動安定性や相性が確認された次年度以降に購入する予定に変更したため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、ヨーロッパの骨材生産および広域輸送の現状を調査する予定があり、予算配分額110万円に対する海外旅費の比率が高くなることが想定されるため、デュアルCPUハイエンドワークステーションの購入費の不足分に充てる予定である。
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