研究課題/領域番号 |
15K06635
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
大塚 尚寛 岩手大学, 理工学部, 教授 (40133904)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 骨材 / IoT / サプライチェーン / GIS / クラウド管理 / リアルタイム / 最適化 |
研究実績の概要 |
骨材の生産・供給体制にサプライチェーンの概念を導入し、IoTの活用により骨材の需給関係を全体最適化するための骨材サプライチェーンを一元的に管理できるシステムの構築について検討した。 システムの概要は、つぎの通りである。(1)全国の採石場の骨材資源データベースを基に、採石場の可採資源量や地域ごとの骨材需要量の予測を可能にする。(2)GPSを搭載した重機の使用により、省エネ・高効率・最適化採掘を可能にする。(3)骨材消費地へ、ダンプトラックや貨車、船舶を利用して、輸送時間・輸送コスト・人件費等を考慮した最適経路のもとで輸送する。(4)IoTを利用することで、輸送中の状況を管理者がリアルタイムに管理できるようにする 各工程の研究実績は、つぎの通りである。(1)東北6県を対象として、各採石場の現状調査、地形情報、地質情報、環境情報、開発規制情報、経済情報を集積し、骨材サプライチェーン構築の基本情報となる骨材資源データベースを作成した。(2)骨材需要量と社会、経済情報データを、1980年から現在に至るまで年度ごとに比較し、骨材需要量の関係要因を抽出して、日本の骨材需量の将来予測を可能とする予測式を導出した。(3)採掘場で稼働する重機にGPSを搭載し、各重機の稼働位置やサイクルタイムを「見える化」して把握できるシステムを開発した。(4)デジタル無線機を介して、採掘場内で稼働する重機の位置情報を作業管理室のホストPCに転送できるシステムを開発した。(5)ダンプトラックによる広域的な最適輸送経路を選択できるシステムを、CO2排出量の削減を同時に検討できるシステムとして開発した。(6)骨材サプライチェーンシステムとして、GISを利用したクラウドコンピューティングにより、生産者や発注者のPC、モバイル端末から直接アクセス可能なものとするクラウド管理システムの基本コンセプトを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨材サプライチェーンの概念の導入に当たり、国を越えた骨材の流通が行われている欧州の骨材流通事情を視察する目的で、イギリスを対象として視察調査を行った。その結果、イギリスでは、骨材生産の殆どが大手6社で占められており、それらの企業の傘下にある採掘場では、年間を通してコンスタントに骨材の生産を行い、これらの骨材を輸送コストの安い貨車輸送で消費地近くの国内に100箇所以上ある集積場にストックしておき、需要に応じてダンプトラックで建設現場等に輸送するシステムが採用されていることが分かった。 わが国では、今後、大都市圏と地方圏での骨材需要に大きな格差が生まれることや、大都市圏では近郊の骨材採掘場資源の枯渇により、骨材の長距離輸送が必要になることが想定される。この観点からすると、骨材の生産・供給体制にサプライチェーンの概念を導入し、IoTの活用により、骨材の需給関係を全体最適化するための骨材サプライチェーンを一元的に管理できるシステムを構築することが極めて重要であることが、イギリスの骨材流通事情を視察して改めて認識させられた。 今回のイギリス視察の成果を踏まえて、先行研究で開発した各システムを、IoTを活用した骨材サプライチェーンの構築にどのように利用するかを、基本コンセプトに基づき検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
骨材の生産・供給体制にサプライチェーンの概念を導入し、IoTの活用により、骨材の需給関係を全体最適化するための骨材サプライチェーンを一元的に管理できるシステムの構築について、つぎのように研究を推進する。 1.骨材の広域的な最適輸送をシミュレーションするシステムの開発には、先に開発した「砕石運搬過程におけるCO2排出量削減のための最適輸送シミュレーションシステム」の研究成果を改良・発展させる。この中で、骨材の生産地から消費地への輸送については、GISの拡張機能であるNet Work解析機能を利用する。 2.骨材の広域サプライチェーン最適化を可能にするGISを利用したクラウド管理システムの構築 (1)骨材の需要量と供給量とを広域的に把握し、骨材工場の生産量・出荷量を調整できる機能を有するシステムとする。(2)生産者から消費者へ骨材を輸送する際には、実際の道路網に関するデータを用いて、地図上でルート設定のシミュレーションを可能にするシステムとする。(3)クラウド管理システムのエンドユーザである骨材生産企業のPCや、骨材の輸送に直接携わるダンプトラックドライバーのスマートフォン等のモバイル端末からの直接アクセスを可能とし、各モバイル端末からの位置情報や骨材輸送量・移動距離等をビックデータとして、骨材の広域的な最適輸送に反映させ、サプライチェーンの全体最適化を可能にするシステムとする。 3年間の研究成果を統合して、需給関係を全体最適化するための骨材サプライチェーンの確立と、それを一元的に管理することを可能にするクラウド管理システムを完成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
イギリスの骨材生産および広域輸送に関する視察調査のための海外旅費が予定より多く掛かり、デュアルCPUハイエンドワークステーションの購入を見送らざるを得なくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
デュアルCPUハイエンドワークステーションの購入に、平成28年度の繰越金と平成29年度の助成金を充てる計画である。
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