研究課題/領域番号 |
15K06638
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
大川 浩一 秋田大学, 理工学研究科, 准教授 (00375221)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 二酸化炭素 / 超音波 / モノエタノールアミン / CCS / 低温脱離 |
研究実績の概要 |
モノエタノール(MEA)溶液からの二酸化炭素(CO2)脱離に及ぼす超音波出力の影響について調べた。0.2MのMEA溶液にCO2を100mL/minで1時間吹き込みCO2を吸収したMEA溶液を調製した。この溶液にCaCl2溶液をCa/MEA=0.05となるように添加するとともに超音波を25℃で5分間照射した。その際、出力は40, 80, 120, 160,および200Wに設定して照射した。この結果、出力が高いほど、CO2の脱離量が大きくなることがわかった。120Wから急激にCO2脱離量が増加することがわかった。また、CO2脱離量に対する周波数の影響についても調べた。28kHzの低周波数と200kHzの高周波数の振動子を用いて同出力(200W)にて、CO2脱離量を調べたところ、低周波数の方がその値が大きかった。周波数により、生成する気泡のサイズが異なり、高周波数の方が小さいため、生成した気泡がMEA溶液から脱離する前に再度吸収されたと考えられる。これらの結果から、CO2を短時間で脱離するには、高出力・低周波数の超音波照射が適していることが明らかになった。しかしながら、超音波を用いた場合、CO2脱離速度は速いものの、最終的な脱離量は撹拌の場合と同じであった。これは、両方法で脱離可能なCO2の形態が溶存した二酸化炭素(CO2(aq))のみであり、このCO2(aq)脱離に伴い溶液のpHが上昇することでCO2(aq)の存在割合は減少し、最終的にHCO3-とCO3 2-となるため、脱離が進まなくなることがわかった。以上の結果より、より低いpH領域を使用することができれば、超音波によるCO2脱離率(CO2吸収量に対するCO2脱離量の割合)の改善が期待できる。そこで、モノエタノールアミンよりも酸解離定数の大きなアミン溶液を使用することを今後検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CO2を吸収したMEA溶液から、CO2を脱離するために、超音波とCaCl2を用いた実験を昨年度から引き続き実施した。超音波の出力を変化させ、CO2脱離実験を行った。この実験から、超音波出力の増加とともに、CO2脱離量が増加することが明らかになり、ある一定の出力を超えたところで、その量が急激に増加することがわかった。また、周波数とCO2脱離量の関係を実験を行い調べたところ、低周波数(28kHz)は、同出力の高周波数(200kHz)に比べて脱離量が多いことが明らかになった。 これら結果の一部と昨年度までの結果をまとめ、論文投稿を行った。体調不良(出血性十二指腸潰瘍)にて、学会発表ができなかったが、予定していた論文投稿は行えたため、現在の進捗は、当初予定していた計画をおおむね満たしている。よって、現在までの進捗は良好であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
モノエタノールアミンからCO2を脱離するにあたって、超音波を使用することで、撹拌に比べその脱離速度が速くなることが、これまでの研究で明らかになった。しかしながら、長時間処理を行うと最終的なCO2脱離量は、超音波を用いた場合も、撹拌を用いた場合も同じであった。これは、超音波および撹拌で脱離可能なCO2の形態が、溶存CO2のみであり、溶存CO2が存在できるpH範囲においてのみ脱離効果を有することが要因と考えている。CO2を吸着したモノエタノールアミンから、CO2を脱離すると溶液のpHが上昇し、その値が8.2を超えると、CO2の形態は主にHCO3-となり、溶存CO2は存在できない。すなわち、pHが8.2に到達するとCO2の脱離がそれ以上進みにくくなる。このような結果から、今後の方針として、酸解離定数の大きなアミン類を選択して、より低いpH領域を使用することで、CO2脱離効率の向上を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度までの研究結果から、超音波によるMEA溶液からのCO2脱離速度は、撹拌に比べて速いため、短時間の処理でCO2を脱離できるという利点を有することがわかった。しかしながら、脱離率は十分に高くはない。この課題を克服するため、脱離が可能なCO2形態が存在できる低pH域を利用することに焦点をあて、それを可能とするアミン溶液を探索したいと考えている。今年度は、この探索を行うことができなかったため、次年度に行う。そのため、アミン類の試薬の購入、全有機炭素測定装置の維持費等を物品費から支出する。また、これら成果を論文発表、学会発表する予定であるため、これら費用を旅費およびその他から支出する。また、今年度同様、引き続き雇用を行い、データ整理および実験補助をしてもらうことで、計画的に実験を行うとともに最終年度としてのまとめを行う。
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