石炭火力発電所などから大気中へ排出される二酸化炭素(CO2)量を削減するために、CO2の分離回収および地中貯留(CCS)技術が注目されている。CO2を排出ガス中からアミンを用いて選択的に回収し、それを脱離することで高純度のCO2として地中へ貯留する。課題は、脱離の際に高温処理が必要な点である。 本研究では、CO2を吸収したモノエタノールアミン(MEA)溶液に超音波を照射することで、低温にてCO2を脱離させることを目的とした。 脱離実験は、CO2を吸収した0.2 mol/LのMEA溶液に超音波を照射することで行った。超音波によるMEA溶液からのCO2脱離は、溶液のpHが大きな影響を及ぼし、溶存CO2が存在できるpH8.2までは脱離が可能で、それより高いpHでは脱離が不可能であった。MEA溶液の濃度が高くなると、pHが高くなるため、2Mまでは超音波による脱気が有効であることが明らかになった。また、超音波照射による脱気過程において、わずかな量のCaCl2の添加は、CO2ガスとしての脱離量を向上させることが明らかになった。これは超音波ではCO2ガスとして直接脱離できないHCO3-の形態に対して、Ca2+が反応することで炭酸カルシウム(CaCO3)の生成と共にCO2(ガス)が生成するためと考えられる。また、超音波を照射することで、撹拌と比較してCO2脱離率が向上したが、これはCa添加により生成した難溶性のCaCO3がCO2を吸収したMEA溶液中へ溶解するのを促進し、再度HCO3-の形態に戻ったためと考えられる。Ca添加で生成した炭酸カルシウムは、超音波照射下では単一相のカルサイトであった。これら結果を論文発表した。また、Caを添加せずに超音波によるCO2脱離量を向上させるため、溶存CO2としての存在割合を高くできるアミン溶液を探索したところ第三級アミンが適していることが明らかになった。
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