研究課題/領域番号 |
15K06643
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研究機関 | 埼玉県環境科学国際センター |
研究代表者 |
白石 英孝 埼玉県環境科学国際センター, 研究推進室, 研究推進室長 (60415396)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地球計測 / 地震波干渉法 / 複素コヒーレンス関数 |
研究実績の概要 |
本研究は、地震災害への対処や資源探査等で使われる地下探査技術の一つ、地震波干渉法について、その適用範囲を拡大する解析法の開発を行うものである。この方法は観測点間を伝わる地震波や地盤の微振動の速度を測定し地下構造を推定する技術で、主に地震観測網を用いて広域の地下構造の推定に使われる。しかし長期間の観測記録が必要なため、任意地点での短時間の調査(機動観測)は困難である。そこで本研究では、機動観測に対応可能な新たな解析法を開発することを目的としている。 本年度は、2地点の観測で得られる複素コヒーレンス関数(CCF)を対象に、震源特性の数学的な表現方法の再検討を行い、新たな速度計測法への適用可能性を検討した。この方法では物理的な厳密性はやや欠けるものの、2つのパラメータだけで震源特性を表現できるようにしたため、解析への組み込みが極めて容易になった。また、地盤特性を抽出する方法として、CCFの観測値と理論値との差を最小(または極小)とする地盤特性をグリッドサーチによって求める方法を試みた。この際には、先に述べた震源特性の新しい表現方法を導入することで、探索の簡便化を図ることができた。この方法を用いて数値実験を行ったところ、CCFの観測値と理論値との残差は、複数の極小値(複数解)をもち、その中には正解値が含まれているものの、正解値を抽出するためには、震源依存項の適切な処理が必要であることが分かった。ここで適切な処理とは、震源依存項の抑制または同定を意味するが、観測対象を地震波とするか微動とするかによって異なる処理方法が必要となるものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、研究の方針として、2地点の観測で得られる観測値から震源に関するパラメータを決定し、その後伝搬場の情報(伝搬速度)を抽出することを予定していた。本年度は、これまでの検討結果に基づいて、震源モデルの新たな数学的表現方法を開発し、分布震源をより少数のパラメータによって記述することが可能となった。この震源モデルを利用して伝搬速度を推定したところ複数解が存在し、正解値を抽出するには、より正確な震源パラメータの決定が必要であることが分かった。このパラメータの決定方法は、対象とする震源(地震か微動か)によって異なるものと考えられ、特に微動を利用しようとする場合には、不特定多数の震源を2点観測の結果だけでモデル化しなければならず、その対処方法の検討に時間を要しており、進捗はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の検討により、推定値に含まれる誤差の抑制についてはほぼ解決できたものと考えられる。しかしながら新たに次のような課題の解決が必要となっている。 ・速度の推定結果には複数解が存在し、正解値を決定するには、震源依存項を正確に同定する必要がある。同定方法は、震源(地震か微動か)によって異なり、特に地下探査に利用しやすい微動については、不特定多数の震源が対象となるため、2点観測だけでは同定が困難となる可能性がある。 そこで、今後は課題の解決に向けた次の検討を行い、研究を推進する。 ・微動への適用については、観測方法を2点観測に限定せずリニアアレイに拡張して実用的な探査方法の開発に向けた検討を行う。地震波への適用については、既存観測網の記録への本研究による推定方法の適用を試み、その妥当性の検証や課題を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
・ワークステーションの導入が予定されており、2017年度後半には妥当と思われる性能の製品が発売されたものの、その直後CPUの設計上の脆弱性が報道されたため、導入を見送ってメーカー側の対応をみている状況にある。 ・また、本研究の予備実験に使用を予定していた機材の動作確認を行ったところ、当初期待していた精度が得られない可能性があったため、その対応をメーカーに打診したところ、改善用モジュールのリリースが2018年3月の予定であり、入手後には対応の検討も行う必要があるとのことで、2017年度中の対応が困難な状況にあった。
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