研究課題/領域番号 |
15K06645
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 進二 京都大学, エネルギー理工学研究所, 助教 (70346055)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ビーム放射分光法 / アバランシェフォトダイオード / 乱流揺動 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、ビーム放射分光イメージング計測機器の開発を手がけ、MHD・乱流揺動の時空間構造を明らかにすることを目標とする。特にヘリオトロンJで高強度ガスパフ法を用いた高密度放電において観測されているHモード遷移前の前駆振動を観測の対象とする。 平成27年度は1.ビーム放射分光イメージング計測機器の整備、2.乱流揺動計測に必要な検出感度の評価、3.H-mode遷移時のビーム放射分光計測による周辺部密度勾配の動的変化の観測、を行った。1.のビーム放射分光イメージング計測機器の整備について、光学系として径方向10点×ポロイダル方向4点を観測するための大口径バンドル光ファイバーを整備した。2.に関して、微弱な揺らぎに対する検出限界をLEDを高速駆動するシステムを作成し調べた。乱流揺動レベルの微弱光に対して検出に必要なアンサンブル処理数を割り出すことで、実質的に乱流揺動計測に必要な検出感度レベルを評価した。ヘリオトロンJにおいて高強度ガスパフ法を用いた高密度プラズマ放電でH-mode遷移が観測された際に、ビーム放射分光計測により周辺部密度勾配を調べたところ、遷移と同時に周辺部の密度勾配が上昇していることが明らかになった。この結果はH-mode遷移における密度勾配のダイナミックスを示すものである。 これらの成果は研究代表者が第一著者として、第32回プラズマ・核融合学会年会の招待講演に採択され、現在までのビーム放射分光計測の開発のレビューを含めて発表した。またその他として国際会議での発表2件(内一件は口頭発表)を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は1.ビーム放射分光イメージング計測機器の整備、2.乱流揺動計測に必要な検出感度の評価、3.H-mode遷移時のビーム放射分光計測による周辺部密度勾配の動的変化の観測、を行った。1に関して、径方向×ポロイダル方向に10×4の視線を用意するための光ファイバーを整備した。2.の乱流揺動計測に必要な検出感度の評価に関しては、乱流揺動レベルの微弱な揺らぎを判別するのに、どの程度の感度・アンサンブル処理が必要か調べた。観測対象のHα線に近い中心波長を持つLEDを高速(50kHz)で駆動し、乱流揺動レベルの微弱な揺らぎを模擬した。現有のアバランシェフォトダイオード(APD)では最低50アンサンブル必要であることがわかったが、一方でアレイ型のAPDを用いたイメージング機器では200アンサンブル以上必要であることがわかり、イメージング計測には光学系をより明るくする必要があることがわかった。実際には位相差の異なる2つの微弱な揺らぎを持つ発光を2台のAPDでそれぞれ計測し、その位相差の測定誤差を評価する手法で、必要なアンサンブル数・発光強度を求める必要がある。 また、ヘリオトロンJにおいて高強度ガスパフ法を用いた高密度プラズマ放電でH-mode遷移が観測された際に、ビーム放射分光計測により周辺部密度勾配を調べたところ、遷移と同時に周辺部の密度勾配が上昇していることが分かった。この結果はH-mode遷移における密度勾配のダイナミックスを示すものである。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は乱流揺動計測に必要な検出感度の評価をすすめ、感度向上のための計測システムの改造を行う。改造案としてA. 真空中で用いているミラーのコーティングを検討する。プラズマ放電実験環境下(超高真空かつある程度の温度上昇・熱流束が予想)でも使用可能なコーティングを施し、反射率を40%から90%に向上させる。B. APDの冷却を検討する。予備実験ではAPDを-22度まで冷却するとノイズレベルが30%低下することがわかっているが、微弱信号に対する位相差評価の測定限界がどの程度向上するか不明である。そのため平成27年度に実施したLEDを用いた揺動の模擬をAPDを冷却した状態で再度行う。これらの結果を受けて必要温度を評価し、低温恒温槽の設置を検討する。C. フィルター光学系を改良する。フィルターの半値幅を1.5nmから2.5nmにできる限り拡げ、中心透過率の向上とE/2、E/3のビーム放射光成分も観測することで感度の向上を目指す。またイメージング用レンズの収差を抑えるためカメラレンズのテストも行う。 上記改造と平行して2次元イメージング計測を開始する。まずは高速イオンMHD揺動等の揺動強度の強い不安定性を対象に計測を行う。また高強度ガスパフ法によるH-modeプラズマを対象とした乱流計測も進める。 成果報告に関して、第一著者として高温プラズマ計測会議およびIAEA核融合エネルギー会議にて成果を発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画に従ってビーム放射分光イメージング装置開発に必要な経費執行を進めてきたが、装置仕様等の見直しを図り少額の未使用残が発生した為、平成28年度へ繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越し分については平成28年6月に米国で開かれる国際会議発表のための旅費・参加費に充てることとし、効率的に使用する。
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