研究課題/領域番号 |
15K06648
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
谷貝 剛 上智大学, 理工学部, 准教授 (60361127)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 核融合実験炉 / 超電導ケーブル・イン・コンジット導体 / 繰り返し励磁 / 撚りピッチ / 素線間接触抵抗 / 電流分布 / 安定性 |
研究実績の概要 |
核融合においては、高温プラズマ状態の燃料を閉じ込めるために大型の超電導コイルが必須である。コイルに用いる導体は、直径1mm程度の超電導素線を多数段にわけて撚り合わせ、1000本程度の素線が複雑に絡み合った導体をステンレスのケース(コンジット)に圧縮して収められた、ケーブル・イン・コンジット導体(CIC導体)である。 この導体は数1000回の励磁・減磁サイクルに耐える必要があ。従来の長い撚りピッチでは、超電導特性の目安となる分流開始温度(Tcs)がサイクルと共に劣化する現象が観測されていたが、1次撚りピッチを短く(45mmから25mmへ変更)すると、この現象は見られなくなった。これは、素線同士が密に結合して電磁力に対する剛性向上によって、素線の動きが抑制された事が要因と考えられている。一方で素線間の電気的結合が強くなった結果、交流損失は2~3倍になっており、発熱の増大によるマグネットの安全性の減少が問題である。 CIC導体は、完成後に内部の素線配置や素線間の接触状況を詳細に知ることは不可能であった。そのため、導体の臨界電流は、上記の劣化を考慮し、安全性を最大限保証するために、内包する素線の本数倍の性能に対して、20~30%を定格電流としている。過剰な安全尤度設定により、現状では健全な運転条件を保持しているが、今後さらに大型化する実証炉では、熱核融合エネルギーを電力に変換するブランケット装置の設置スペース確保ため、コイルサイズのスリム化および安全尤度の最適化が必須である。 本研究では、撚りピッチの異なるCIC導体について、内部の空隙をエポキシで含浸して10mm間隔で切断、そのサンプルを冷凍機冷却して運転環境での素線配置、素線間接触抵抗分布を詳細に計測し、電流分布や交流損失を算出、その結果、次世代の実証炉用マグネットを見据えた導体の安全尤度の最適化に対する指針を示す事が目的である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず、想定外に遅れが生じている点をまとめると、以下のようになる。 1.導体内部をエポキシ含浸した際の素線配置・接触抵抗値に対する影響を測定する必要が生じたため、その実験を行った事。 2.冷凍機は共同研究機関から借用する事で確保したが、既存の真空容器では断熱設計が不十分で、その再設計に時間がかかった事の以上2点である。 1に関しては、当初熱収縮率から想定されるエポキシ含浸の影響がほとんどないと見積もっていた。しかし、研究協力者からの助言により、実験的に証明する事になった。導体エポキシ含浸を施した450mm長の導体とそのままの導体を調達し、片端の撚り線を解して電流導入端子に接続、さまざまな素線の組み合わせで、素線間接触抵抗の、450mm長の平均抵抗値を測定したところ、電流分布計算に用いる範囲では、エポキシ含浸の影響がないことを確認した。2に関しては、冷凍機が高価であるため、新規購入が不可能だった。そこで、研究協力者から借用する事になったが、真空容器の取り付け変更が必要になった。また、断熱設計が不十分だったこともあり、完全に新設計が必要になった事が大きい。さらに、1の実験の準備で予算が圧縮された結果、想定通りの真空容器が製作不可能になった事も要因のひとつである。 一方、導体サンプルは研究協力者の機関でしか扱っていない貴重なものであるにも関わらず、本研究で用いる範囲で自由に調達可能である事は、スムーズな研究遂行に大きく寄与している。容器の設計・製作に関しては、研究協力者の機関からの助成によって、平成28年度に実行に移すことが決まっており、今後の展開は順調に進むと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、第1四半期で真空容器の設計・製作を行い、第2四半期で真空ポンプ、冷凍機の取り付けを行う予定である。第3四半期以降での運転開始を目指す。標準撚りピッチの導体のサンプル準備については、すでに熱処理、エポキシ含浸および切断加工の打ち合わせが始まっており、第3四半期までの納品に向けて準備を進めているところである。 短い撚りピッチの導体についても、調達と熱処理の準備を同時に進めており、スムーズな研究遂行に努める。
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