研究課題/領域番号 |
15K06649
|
研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
成嶋 吉朗 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (40332184)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 磁気島 / 磁場閉じ込め核融合 / プラズマ平衡 / デタッチプラズマ |
研究実績の概要 |
ヘリカル型核融合炉における平衡磁場配位の自己修復機能について、平衡磁場配位で生成される磁気島の振舞いに着目して研究を進めてきた。実験で使用する実験装置、大型ヘリカル装置(LHD)における磁気島の特性について、新たな知見を得ることができた。これまで観測されてきた磁気島の振る舞いは、自己修復機能が働くことによる磁気島の『消失』、およびそれが働かないときの『拡大』の二値的な状態が観測されてきた。そのため、磁気島は『消失』または『拡大』どちらかの状態しか取りえず、その中間の状態は過渡的にしか存在できないと思われてきた。しかし、その中間状態が数秒間維持されることがあることを新たに発見した。これを『中間状態(Intermediate state)』と名付け、その達成条件を調べた結果、これまでにも平衡磁場配位の自己修復機能に重要とされてきたプラズマの回転速度と相関があることが分かった。プラズマの回転速度が十分早い場合、自己修復機能が働き磁気島が消失するが、遅いと磁気島が拡大する。ある条件の下でプラズマ回転速度がそれらの中間に維持されると、磁気島も中間状態を維持することを明らかにした。これについてはY. Narushima, et al., Nuclear Fusion 57 076024 (2017)に発表した。 一連の研究を通じて、新たな別の発見もあった。核融合プラズマの定常維持に貢献すると考えられているダイバータ非接触プラズマの達成に、磁気島の存在が影響を与えている事を示す実験結果を得た。この場合、平衡磁場配位に大きな影響を与えることなく、周辺部に生成された磁気島が『拡大』するときに非接触プラズマが達成され、その際の磁気島幅の大きさではなく『拡大する時』に非接触状態になることを実験的に観測した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は磁気島の振舞いに着目して平衡磁場配位の自己修復機能を解明する観点から研究を進めてきた。磁気島の拡大、縮小というalternativeな振舞いだけではなく、当初予期していなかった中間状態を発見し、その現象を説明するなど、当初の計画通りに進んでいるといえる。さらに、磁気島物理の研究を通じて幅広い分野における研究を視野に入れたとき、これまで考慮していなかったダイバータ物理において、非接触プラズマの生成に対して磁気島の振る舞いが重要な役割を果たすことを見出した。これについては当初の計画以上に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度は最終年度となるので、これまで得られた実験データの精査を通じて以下の二つの課題をまとめていく。1.磁気島の拡大縮小の振舞い。2.非接触プラズマ生成時の磁気島の影響。磁気島の拡大縮小の振舞については、平衡磁場配位の自己修復機能の観点からは縮小した方が都合が良いとされるため、ある程度の速度を有するプラズマ回転の維持が必要と考えられる。ほぼまとめ上げられている状態である。一方で、非接触プラズマ生成にする磁気島の影響については、その達成のためにはむしろ平衡磁場配位の自己修復機能が非接触プラズマの生成を阻害するという一面を持つことから、プラズマを安定に閉じ込める観点からどの様な平衡磁場配位(磁気島を含む)が最適なのかを明らかにする必要がある。すなわち、「どの程度までならば磁気島の存在を許容できるのか」について調べていく推進方策である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
【次年度使用額が生じた理由】国際学会出席等における旅費について、当初の予定よりも安価で済んだために差額が生じた。平成30年度においては研究成果発表等の旅費として執行する予定である。
|