研究課題/領域番号 |
15K06649
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
成嶋 吉朗 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (40332184)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 核融合プラズマ / 平衡磁場配位 / 磁気島 |
研究実績の概要 |
将来のヘリカル型核融合炉における平衡磁場配位の自己修復機能の理解のためには、燃料である水素の同位体効果の解明が重要である。報告者がこれまで実施してきた多くの実験研究では、対象とするプラズマは軽水素を用いている。そのため、対象となるプラズマの燃料が重水素ガスになった場合の実験結果のデータベース化が求められていた。そのため、平成30年度は重水素プラズマ中での平衡磁場配位の自己修復機能を検証するために、大型ヘリカル装置(LHD)における重水素プラズマ実験を実施した。 その結果、重水素プラズマの平衡配位においては、軽水素プラズマの場合に比べて自己修復する領域(ここでは電子の衝突頻度と規格化圧力値で示される空間)が狭い可能性があることが分かった。すなわち、外部摂動磁場を印加した際に、軽水素プラズマの場合よりも重水素プラズマの場合の方が排除されにくいことを示している。言い換えれば、重水素プラズマにおいては軽水素プラズマの場合よりも外部摂動磁場が浸み込みやすい状況であることを実験的に確認することができた。 これらの実験結果は、軽水素プラズマに比べて重水素プラズマにおける平衡磁場配位の自己修復機能を有効に働かせるための方策を考えることが必要であるという問題提起をもたらした。これまでの研究結果の知見から、外部摂動磁場はプラズマの回転によって遮蔽できることが分かっているため、その成果を活用することで重水素プラズマにおける平衡磁場配位の自己修復機能を増長させることができると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LHD実験が一年延期されるという当初予期していないことが起きたが、一年の延長が認められたため、その計画での進捗はおおむね順調である。平成28年には第26回国際原子力機関(IAEA)核融合エネルギー会議にてその成果を発表し、翌平成29年にはそれらの成果を論文(Nuclear Fusion誌)に発表することができた。さらに、平成30年度までには学会発表は国内学会6件、国際学会7件に上る。実験データの収集も順調に進んでおり、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度は最終年度となるが、おおむね当初の予定通りに研究が進んでいるため、これまで得られた実験結果及び学会発表の総まとめを実施する年度とすることができる。これまでに得られた実験データを補強するためのLHD実験を実施し、データを増強する。特に、平衡磁場配位の自己修復機能をより明確にするために、平成30年度に得られたプラズマパラメータ範囲よりも幅広い領域におけるプラズマの振舞いを明らかにする。そのためには、平衡磁場配位の磁場強度の調整並びにプラズマ加熱手法の調整などが必要であるが、この点については軽水素実験で得られた知見がそのまま流用できるため、実施可能性は高いと言える、また、スピンオフ的に発見された非接触プラズマにおける外部摂動磁場の役割についての研究についても、論文にまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に研究所内で発生した火災事故により実験計画が1年先送りとなったが必要な実験データの一部を取得できた。また29年度の報告では当初予期していない新発見があったため当初の計画以上に発展しているとしたが、本来の目的である平衡磁場配位の自己修復機能の解明のためにはより高ベータ低衝突周波数領域における実験データに基づいた解析が必要である。そのため、一年の延長が認められた。その結果、平成30年度に予定していた実験を令和元年度に実施し、これまでの研究成果の国際会議での発表並びに論文発表ための支出を実施する計画である。
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