最終年度となる令和元年度は、その前年度までに収集された実験データの解析結果等に基づいた議論を通じ、LHDにおける重水素実験で得られた磁気島のダイナミクスについての理解を進めることができた。LHDプラズマでは平衡磁場配位の一部と共鳴する外部摂動磁場を印加することで、磁気島構造を得ることができ、磁気島を有した平衡磁場配位中に有限の圧力を持つプラズマを生成すると、磁気島構造はプラズマによる修正を受け、拡大若しくは縮小及び消失するダイナミクスが観測される。これら磁気島のダイナミクスは、プラズマのフローと相関があり、フローが速いと外部摂動摂動磁場が遮蔽されて磁気島が生成されない状態すなわち消失する。本研究期間の前半で得られていた軽水素プラズマでの実験によって、磁気島の拡大・縮小に対する明確な閾値と、拡大縮小の中間にある状態を発見することができた。また、スピンオフとして磁気島のダイナミクスがプラズマとダイバータの接触/非接触状態の遷移に相関があることをまとめ、学会などで報告した。また、スペインCIEMAT研究所にて本研究課題に関する議論・打合わせ・情報収集ならびに論文投稿に関する打ち合わせをおこなった。研究期間後半において、重水素を用いた実験が行われ、これまで軽水素プラズマで得られていた知見とは異なる現象を観測することができた。軽水素プラズマでは磁気島が縮小するようなプラズマ衝突周波数と規格化プラズマ圧力の領域においても、磁気島が縮小しない現象を観測した。重水素プラズマではプラズマフローが軽水素プラズマよりも遅いために、摂動磁場の遮蔽効果が弱いためと考えられる。しかしながら、重水素プラズマにおいても磁気島が自発的に消失する現象が観測されたことで、ヘリカル型核融合炉において磁気島の自発的拡大に伴うプラズマ性能の劣化については深刻な問題とはなりえないことを確認できた。
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