研究課題/領域番号 |
15K06651
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
市口 勝治 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (90211739)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 核融合プラズマ / 数値シミュレーション / 電磁流体力学 / 大型ヘリカル装置 / 安定性 / 交換型モード / シアフロー / 非線形飽和 |
研究実績の概要 |
大型ヘリカル装置(LHD)でのプラズマにおいて、圧力駆動型モードによるプラズマ構造変化に対する共鳴摂動磁場とシアフローの影響の解析を進めた。28年度は、特に、シアフローが交換型モードの安定化に対する影響に注目した。27年度では、モデル的なシアフローによる安定化効果を調べた。その際、シアフローのプロファイルは、実験データのグラフ上の形状を模擬するような関数として与え、その値は磁気面関数であることを仮定した。さらに、トロイダル方向成分は小さいとして無視し、ポロいダル成分のみを導入した。したがって、このプロファイルは、実験結果に近いものであるが物理的意味付けがなされていないものであった。そこで、28年度では、このシアフローモデルの改良を行った。そのための仮定として、フローは磁気面上を流れるものとし、その磁力線に垂直方向成分が、電場ドリフトによって与えられるとした。まず、この仮定の下でのシアフローの解析的な表現を導出した。表現を簡単化するために、磁気座標の一つであるHamada座標を利用した。次に、現在、電磁流体力学的平衡と安定性の解析に使用している計算コードに対応させるための表式を導出した。これらの計算コードでは、円柱座標を採用しているため、Hamada座標から円柱座標への座標変換が必須であり、そのために別の平衡計算コードを付加的に利用することとした。さらに、この表式では、未定の磁気面関数が存在しているので、その決定のために、実験データを採用することにした。そして、最終的にこれらの手順に基づく、シアフローの計算プログラムを開発することに成功した。実験データは、一次元的にしか得られないが、この計算により、この実験データに基づく三次元シアフローを、プラズマ全領域にわたって計算することができるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
圧力駆動型モードによるプラズマ構造変化に対する共鳴摂動磁場とシアフローの影響を解析していく上で、最も重要なシアフローの三次元データを計算する手法を確立することができた。これは、本研究において着実な進展であり、現在の進捗状況として、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
28年度において、大型ヘリカル装置における実験データに基づいたシアフローの三次元プロファイルの計算手法を確立した。29年度以降においては、このプロファイルを用いてシアフローによる交換型モードの安定化の影響を、数値シミュレーションによって明らかにする予定である。この場合、平衡計算にも実験データを用い、実験観測結果の再現を目指す。実験では、シアフローが消えた直後に交換型モードが急激に成長する結果が得られているため、シアフローによって何らかの安定化機構が働いていることが示唆されている。この状況を数値シミュレーションによって追跡し、そのメカニズムを明らかにしたいと考えている。また、このとき、シアフローの停止には、残留誤差磁場による磁気島形成の影響もその物理候補であると考えられている。そこで、三次元平衡計算を行う上において、誤差磁場を導入し、これによる磁気島とフロー停止の関連についても解析を進め、ヘリオトロンプラズマにおけるフローと磁気島との相互作用について詳細な解析を進める。一方、トカマクでは、テアリングモードによって誘起される磁気島によるプラズマ回転の停止は、ロックとモード現象として解析が進められている。そこで、このロックとモード現象と、ヘリオトロンにおける交換型モードに対するフロー停止との比較を行い、メカニズムの類似点や差異について検討を行う。この検討から、プラズマフローおよび磁気島が、プラズマ不安定性によって引き起こされる構造変化に対してどのような影響を及ぼすかについて、トーラスプラズマ全体にわたって包括的に理解することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際共同研究旅費の支払いに不足が生じたため、前倒しで平成29年度分の基金を請求し、認可された。このとき、請求金額の単位が10万円であったため、旅費精算後に余剰が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、59,500円と少額であり、旅費の一部として、利用する予定である。
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