研究実績の概要 |
2022年度においては、まず、先行研究との比較に関する定式化を行った。S.Kumar et al,.Nucl.Fusion(2017) では、非軸対称プラズマでのPS flowという、磁気面上で平均するとゼロとなるフロー成分のみの計算手法が述べられている。一方、本研究で導出した定式化では、全てのフロー成分を含む一般的なものとなっているため、両者の見かけは大きく異なっている。そこで、本研究での定式化において、PS flowとそれ以外の正味のフローとを切り分けた形の表式の導出を行った。その結果、先行研究で採用されている束縛条件が、正味のフローをゼロにすることに対応すること、また、得られたPS flowの表式から先行研究の表式が導出できることを示すことができた。さらに、これまで数値シミュレーションでフロー効果を調べるために用いていた圧力駆動型不安定性について精査を行った。その結果、フローがない場合において、交換型モードから非共鳴モードへの非線形遷移が生じ得ることが得られている。 研究期間全体を通じて得られた主な成果として、まず、1次元の実験フローデータから、三次元のフロープロファイルを計算する手法を確立したことが挙げられる。ここでは、非圧縮の磁気面上の流れを仮定してプラズマフローの一般的な表式をHamada座標を用いて導出し、2つの未定パラメタを実験データから求めるというアイデアを採用した。この手法に基づいてLHDプラズマでの三次元フローを計算する数値計算スキームを開発し、この結果を用いて交換型不安定性の線形成長率に対するフローの影響を調べた。その結果、フローがある一定の値に達するまでは、線形成長率はフローの増加とともに減少するが、その値を超えると増加した。この結果は、フローによる安定化効果とフロー自身が作り出す不安定性とが競合することによるものと考えている。
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