研究課題/領域番号 |
15K06652
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
藤堂 泰 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (00249971)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 高エネルギー粒子 / 高速イオン / 分布硬直性 / アルフベン固有モード / 大型ヘリカル装置(LHD) / トカマク / シミュレーション |
研究実績の概要 |
将来の核融合発電では核融合反応から発生する高エネルギーヘリウム(アルファ粒子)がプラズマを加熱する重要な役割を担う。高エネルギーアルファ粒子はプラズマの磁気流体力学的(MHD)振動を不安定化し、MHD振動は高エネルギーアルファ粒子をプラズマ外部に損失させる可能性があるため、両者の相互作用は核融合プラズマの重要な研究課題である。環状磁場閉じ込めプラズマにおける高エネルギー粒子とMHD振動の相互作用についてシミュレーション研究を実施し、以下の成果を得た。 1.研究代表者が開発したマルチフェーズ・ハイブリッドシミュレーションをトカマクプラズマ実験に適用し、異なる中性粒子ビーム入射(NBI)パワーと高速イオン減速時間に対する時間発展を調べた。その結果、物理条件に依存して定常的な時間発展とバースト的な時間発展が現れること、NBIパワーがある一定値を超えるとそれ以上NBIパワーを強くしても高速イオン分布が増加せずほぼ一定の分布となることを実証した。 2.マルチフェーズ・ハイブリッドシミュレーションを大型ヘリカル装置(LHD)実験に適用し、実験で観測されたMHD振動の空間分布とそれによる高速イオン輸送を明らかにした。 3.粒子シミュレーション手法を熱イオンに適用することによって熱イオンの運動論的効果を取り扱うことが可能なシミュレーションモデルを開発し、この新しいシミュレーションモデルを高エネルギー粒子・MHDハイブリッドシミュレーションコードに実装した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は、(1)電子サイクロトロン波加熱によるアルフベン固有(AE)モードの制御、(2)ITERにおけるAEモードの安定性と高速イオン輸送、(3)高エネルギー粒子駆動測地的音響モードによるアルファチャネリング(イオン加熱)に関するシミュレーション研究を行い、各課題の鍵となる物理機構を解明することによりそれぞれの応用に向けて物理基盤を構築することである。平成28年度の研究推進方策では、(2)および(3)に対して重要な熱イオン運動論的効果を高エネルギー粒子・MHDハイブリッドシミュレーションコードに導入することとしていた。計画通り本研究課題の鍵となる熱イオン運動論的効果をシミュレーションコードに導入できたことにより、本研究課題は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に熱イオンの運動論的効果を導入して拡張したシミュレーションコードを用いて高エネルギー粒子駆動不安定性のシミュレーションを実行し、熱イオンのランダウ減衰による不安定性の安定化や、不安定性の時間発展に対する熱イオンの運動論的効果を帯状流と測地的音響モードの形成に着目して調査する。また研究課題(1)電子サイクロトロン波加熱によるアルフベン固有(AE)モード制御の物理機構解明に向けて、高エネルギー電子とAEモードの相互作用に関するシミュレーション研究を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の計画では米国の研究機関に所属する研究協力者を招へいする予定であったが、当該研究者の健康上の理由により招へいできなくなったため、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
シミュレーションデータ解析のためのワークステーション購入に使用する。
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